• love
  • 2013.09.26

湯山玲子&二村ヒトシが語る!モテと快楽があなたを不幸にする理由

『快楽上等!』を出版した湯山玲子さんと二村ヒトシさんの対談をお送りします。性欲があることを自覚した女性は、草食系男子よりむしろ「男いらず」の道をまっしぐらに進んでしまっているのかも? ではオナニーを手に入れた女がそれでも男性を求める意味とはいったい?

第1回:すべての女は面倒くさい!


 上野千鶴子さんとの対談『快楽上等! 3.11以降を生きる』が好調の著述家・湯山玲子さんと、『すべてはモテるためである』『恋とセックスで幸せになる秘密』が話題沸騰中のAV監督・二村ヒトシさん

 4月16日(火)に開催された、「男女のモテと快楽について」をめぐるお2人の白熱したトークショーから、その内容のごく一部を抜粋し、全4回でお届けします。

女が「モテ」を捨てだした!?

湯山玲子


湯山玲子さん(以下、敬称略): いま、「モテ」ってすごく分が悪い言葉になってしまいましたね。
「草食男子」なんて言われて、男の人が大挙して女の人から逃げ出したと思ったら、さすがに女の方も、アンアンの特集での「セックステク、プロ並になる」モードから正気に返ったというか、いまや女の人も「ケッ」てなもんでね。

二村ヒトシさん(以下、敬称略):「女も男を必要としなくなってきた」ってことですか?

湯山: 「負け犬」って言葉が生まれた辺りから、「もういいよ、女だけでも楽しくやるよ」みたいなムードはあったと思うんだけど、最近はもう、最初から男なんていらないっていう人が増えてる気がしますね。日大芸術学部っていうところで教えてるんですけど、毎年入ってくる新入生を見て、年々感じてるよね。

二村: それは湯山さんのおっしゃる「光合成」ってのと関係あるのかな。

湯山: あ、「光合成」を知らない方に説明しますと、これはオナニーのことですね(笑)。光合成のように、自家発電でまかなえるっていう。

二村: 湯山さんが、上野千鶴子さんとの対談本『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)の中で、自分はオナニーとセックスを別腹で楽しむバイリンガルだ、とおっしゃっていたことに非常に共感しました。

湯山: 私は、男性でフェミニズムの論陣に入ってくる人って希少でしょ? もちろん、今までにもアカデミズムや信条から入ってくる人はいたけど、性の当事者での現場感覚となると、そこはちょっと「無い事」になっているからね。その中で、二村さんだけはそこを乗り越えてますからね。

二村: それは完全に誤解であり過大評価なんですが、でも、ありがとうございます。

湯山: 二村さんが強いのはさ、AV監督やって自分も出てるじゃない? 
やってるからこそ語れるっていうのはあるよね。セックスにおいての社会的な刷り込みはもの凄くて、男は「責めと暴力性」をポテンツモチベーションにしている事が大半だし、それに気づいちゃった男はもう、セックス不全になりそう。という前に、セックスは非常に割り切れない物を抱えるわけで、人の言葉を借り手は伝えられない。
ということは、モテてない奴に女や恋愛やセックスはちょっと語れないと思うし。

二村: 僕は、もともとモテたとか、女性が得意だったからAV監督になったわけじゃなくて、むしろ逆。モテないオタクだったんです。

湯山: 二村さんの素性を知らない方に説明しますと、彼は「痴女物」という、要するに女性が男性を襲って欲望を発散させちゃうみたいなシチュエーションのAVを20年近く撮ってきた方です。

二村: レズのAVや、すごい美少年を女装させて女としてあつかったりするのも撮ってます。
基本的に僕が撮ってるのは、僕にとって都合のよい世界。つまりオタクが作るAVなんです。
そんなモテないオタクである自分に、自分で説教をしたのが『すべてはモテるためである』(イースト・プレス、以下『すべモテ』)という本なんです。

すべての男はキモチワルく、すべての女はメンドクサい

二村ヒトシ


湯山: いま、「こじらせ女子」って言うけど、二村さんの『すべモテ』を読むと、男だってとんでもなくこじらせてるよね。

二村: この本は要するに、そもそも男の自意識っていうのは“キモチワルい”ものなんだと。
この本を読んでいるすべての男は気持ち悪いよっていうことを前提に、じゃあ女性に気持ち悪がられないためにはどうするかっていう話から始めました。十数年前、最初にこの本を出したときにあんまり売れなかったのは、最初のページに「あなたがモテないのは、あなたがキモチワルいからです」って書いてあることに、当時の男性が耐えられなかったからだと思うんです。

湯山: そうか、いまの男性は「そうだよな、俺、気持ち悪いかもな」って受け入れちゃうようになったと(笑)。

二村: このたび二度目の文庫化を果たしまして、おかげさまでまあまあ売れておりまして、時代が変わったんですかね…。

湯山: でもね、私、女も「すべての女は気持ち悪い」ってところから始めたほうがいいと思いますよ。
その気持ち悪いという自覚の在り方は違っていて、女の場合はまず、自分の身体に備わった「気持ちの悪い」性欲というものを認める、フィルターをはがすという事です。

二村: それ、同じことを僕は「すべての女は、メンドクサい」と言いたいです。
て言うと女性から怒られてしまいそうですが、彼女が恋をしてしまった相手の男にとって、多くの女性は「面倒くさい存在」になる。それだけでなく、じつは女の人自身にとっても「自分が女である」ということは面倒くさいことなんじゃないかと思うんです。

湯山: すべての男は気持ち悪い存在であり、すべての女は男にとっても女自身にとっても面倒くさい存在であると。おもしろいね。

二村: それはなぜかって言うと、精神分析医の斎藤環さんの言葉を借りれば、男性性っていうのは「オタク的」なものであり、じつは女性性は「ヤンキー的」だからなんです。「オタク」というのは、知識や所有欲でアイデンティティを確保する存在。「ヤンキー」は、人との関係性によってアイデンティティを確保する存在ということ。女性は、人とのつながりや関係に妄想を抱きやすいから、どうしたって面倒くさい。

アイデンティティは分散したほうがいい


湯山: 「関係性」っていうとすごくコミュニケーション能力が高そうな言葉だけど、私は逆に、女性ってアイデンティティを預ける対象が内に向きすぎてるんだと思う。ほら、女の人の趣味って買い物か美容かグルメくらいしかないでしょ?

二村: ああ、ぜんぶ自分に還元されるものですね。だから結局、恋愛でしか自己肯定できなくなっていくと。

湯山: うん、アイデンティティの分散のしかたがヘタ。その点、男性のオタクは、バイクにしろアニメにしろプラモデルにしろ、対象が外にある。アイデンティティの分散投資ができているんですね。

二村: まあ、男性の場合、仕事や会社にアイデンティティを依存してしまっている人がほとんどですけどね。
いまの社会は男性に都合よく作られているから、男性のほうが自己肯定しやすいようにできているんですよ。
それを僕は男性特有の“インチキ自己肯定”と呼んでいるんですが。

湯山: “インチキ自己肯定”、いい言葉だよね。読んでてメモしましたよ(笑)。

二村: 男は、お金が稼げている、仕事がうまくいっている、会社に役職があるみたいなことで「とりあえずの自己肯定感」を得られるんですよ。

湯山: ところが、女は仕事や趣味ではなぜか自己肯定できない。結局、恋愛ができなかったら女としてダメってことにされちゃう。

二村: 「女」としてはよくても、今度は結婚できてなかったら「妻」としてダメ、子どもが産めてなかったら「母」としてダメ、さらに仕事でも自己実現できてないと…、っていう。女の人って、だいたい男より優秀なのに、なぜか自分に対して減点法で考えることが多い。

湯山: まあ、男も女もバランスが悪い。しかし、女の人は、外部へのアイデンティティ託しは本当に意識してやった方がいい。依存ではなくね。依存しちゃう女の人は、この男社会でもっと大変な事になっちゃって、高学歴エリート会社員女性に多いのだけど、褒められることだけを追い求めるこれまたヤヴァイタイプになってしまう。

【第2回へつづく】

Text/福田フクスケ

『快楽上等! 3.11以降を生きる』

湯山玲子
著述家。出版、広告の分野でクリエイティブ・ディレクター、プランナー、プロデューサーとして活動。著作に『ベルばら手帳 マンガの金字塔をオトナ読み!』(マガジンハウス)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)など。月一回のペースで、クラシック音楽をクラブ仕様で爆音で聴く「爆クラ」を主宰。
(画像右:『快楽上等! 3.11以降を生きる』/著者:上野千鶴子、湯山玲子/発行:幻冬舎/価格:1,575円)

『恋とセックスで幸せになる秘密』
『すべてはモテるためである』

二村ヒトシ
アダルトビデオ監督。MotheRs・美少年出版社・欲望解放・レズれ!という4つのAVレーベルを主宰するほか、ムーディーズ、エスワンなどからも監督作を発売。また、ソフト・オン・デマンド制作部門であるSODクリエイト社の顧問(若手監督への「エロとは何か」指導を担当)にも就任。
公式サイト:nimurahitoshi.net
twitter:@nimurahitoshi@love_sex_bot
(画像右:『すべてはモテるためである』/著者:二村ヒトシ/発行:イースト・プレス/文庫ぎんが堂/価格:700円)(画像左:『恋とセックスで幸せになる秘密』/著者:二村ヒトシ/発行:イースト・プレス/価格:1,260円)

Twitter、FacebookでAMのこぼれ話をチェック!

読者アンケート

AMではより楽しく役に立つサイトを目指すため、読者アンケートを実施しております。
本アンケートにご協力お願いします。
アンケートはこちら

あわせて読みたい

9月特集
SEX新連載

ライタープロフィール

福田フクスケ
フリーライター。“くすぶり男子”の視点から恋愛やジェンダー、セックスなどを考察。

今月の特集

AMのこぼれ話