「このまま帰したくない…」
職場の上司と部下。それが、私と彼の関係。
(この関係から一歩前に踏み出したい……!)
そう思ったのは、私のほう。けれど、彼の答えは、「今は仕事で手一杯。あいさんのことはきらいじゃないけれど、今、お付き合いするのは難しい」。
いつもいい雰囲気にはなるけど、ずっと恋人未満。何かが足りない…。
(どうしたら、今の仕事だけの関係を超えられるのだろう)
ふと、数日前に偶然ネットで見かけたヌレヌレというキス専用美容液のことを思い出した。唇に塗るだけで、男性の理性を飛ばして、キスよりその先の関係に進めるなんて…ほんとにそんなことが起こるの…? 半信半疑に思いつつも、クランベリーとラズベリーの香りの『ヌレヌレ・ラブリーキッス』を試してみることにした。唇につけるとフワッとした、甘くてかわいらしい香り。塗っているだけでワクワクしてきた。
翌日、職場で彼がいつもより私をじっと見ているような気がした。
(気のせい……かなぁ)
でも小さな望みにかけて、それからも私は、彼が近くにいるところではヌレヌレを使うことにした。
数日後――
「今夜、空いてる?」
彼からの突然の誘い。もちろんOKをして、彼が予約してくれた個室居酒屋に入った。彼は、何となくソワソワしている。そして、少しお酒が入ってから、ぽつり、ぽつりと話し始めた。
「最近、ダメなんですよね……」
さらに続く彼の言葉に、自分の耳を疑った。
「あいさんにやられてしまってるようで……。 この前はあんなふうにお断りしてしまいましたが、私もあいさんが好きです」
と言って、私の唇を彼はその場ですばやく奪った。仕事ではいつも慎重な彼が、急にこんなことをしてくるなんて…。そして、お会計を済ませた後の帰りのエレベーターの中、彼からまた強引なキス。
「このまま帰したくない…」と誘ってくる。
もう彼はキスだけでは止まらなくなってしまった。
キスだけで、イキそう…
「あいさんの唇を見ていると、たまらなくなってくる」
金曜だったので、そのままホテルに。部屋に入ると後ろから彼がギュッと抱きしめて来て耳元で
「キスしていい?」
「うん……」
そのまま彼のキスを受け止めた。
「あぁ……ん」キスだけでも感じてしまう。そんな彼の甘いキスで、唇や舌、口の中まで性感帯にされてしまったように敏感になった。彼の舌にいろんなところを刺激されるたび、喘ぎ声が漏れてしまう。
(私、キスだけでイってしまうかも……)
私の声に刺激されたのか、そのまま彼は私をベッドに優しく押し倒した。部屋着のワンピースを脱がされる。首筋、肩、鎖骨、とキスがだんだん下ってくる。彼の気持ちが伝わってくるような、丁寧なキス。
「はぁ……っ」
たまらなくなって、吐息を漏らした。そして、彼はまるで崩れやすいお菓子を扱うような優しい手つきでバストを揉んだ。バストがお菓子だとしたら、その上にちょこんと乗っている乳首はチェリー? 彼の手つきや唇を見ていると、本当にそうじゃないかと思いたくなる。舌で軽く転がしたり、キュッと吸いついたり、おいしそう。
「あっ……ん!」
たまらなくなって彼をぎゅっと抱いた。いとおしい気持ちが広がってたまらくなってしまう。彼は体を伸ばし、もう一度キス。愛撫のいろんなタイミングでキスをしてくる。もしかして、私の唇が気持ちいいのかもしれない。
「舌、出して」
言われるがままに舌出す。ちゅうっと音を立てて吸われたので、精一杯舌をのばしたら、その付け根を彼の舌先が突いてきた。
「はぁ……」
彼の舌先に自分の舌全体を絡めるようとしたとき、突然彼は指で私のアソコに触れてきた。花びらがすっかり湿っているのが、触られている感覚だけでわかる。濡れた粘膜がときどき音を立てた。
「あ、ふ……っ」
声を出したいけれど、キスでいっぱいでうまく出せない。蜜はじゅっと溢れ出して、もう大変なことになっている。
「いい?」
彼は私の脚を開いて、「それ」を中心にあてがう。
「うん……」
うなずくと、彼の重みと熱さが体の中へ、中へとぐいぐい入り込んできた。
「あ……あ……っ」
あそこが喜んでいるのがわかる。喜んで、彼にまとわりついている。きゅっと吸いついて、離れようとしない。
「あいの中、気持ちいい……」
「私も……私も気持ちいいっ……」
彼をギュっと抱きしめて、今度はこちらからキスを求める。唇をみっちりと重ねながら、彼は腰を前後させた。感度がどんどん高くなる。彼の膨らんだ亀頭の形まで伝わり、それがGスポットをえぐった。
「あぁ、そこ……いい……」
そこが私の性感帯のひとつだと知ってしまったのか、彼は繰り返しそこを攻める。うっとりしていた私の唇に、再びキスが降ってきた。反射的に身を硬くする。
「だめ……」
こんなに感じているときにキスされたら、すぐにイってしまう。
「あ……あんっ、ま、待って……ぇ」
だけど、彼は止まらない。舌の動きはさらに激しくなる。唇の端から垂れた唾液も、彼が舐め啜った。下半身では滑らかな亀頭が奥深くまで達していた。快楽を放出するドアを、容赦なくぐりぐりと何度もノックする。感じるところをいっぺんに攻められて、もう、おかしくなりそうだった。彼を抱く腕に、無意識に力がこもる。
「ぁん……っあ、は……ぁ」アソコがきゅんっと締まってきた。もう、限界。
「……イキそう? 一緒に、イこうか」彼の腰の動きが早くなる。
「……ん、っふ、あ……あんっ!!」
あぁ、蕩けそうなのに、高まっていく……。視界が白い光に包まれた。
「あ…………っ」
…………。一瞬だけ、意識を失っていた気がする。目を開けると、彼が隣にいた。「あい、すごくかわいかった」
(あれ、いつの間にか名前で呼んでくれている)
今度は優しい、軽やかなキス。何度も、何度も。唇をついばむように。私も同じようなキスを返すと、彼はくすぐったそうに微笑んだ。キス専用美容液をつけたあの居酒屋のキスが、上司と部下の関係を越えさせてくれた。
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