女性向けアダルトVRが作られた理由

 SILK LABOがVR作品を撮った経緯を、イトウミナミ監督とアシスタント・プロデューサーに聞いたところ、まずきっかけは洋モノの女性向けVRを観たことだったという(先述の「『女性のエロスイッチは視覚ではない』は本当か?」をお読みいただければわかるように、欧米で女性向けVRが作られていることは、別に私の分析と矛盾はない)。
いわく、そのVR作品に出ていた男優はゴリゴリにマッチョで全然好みのタイプではなく、試しに観てみただけだったのだが、とにかく実際にセックスしている感覚が強く、観終わったときには男優のことをちょっと好きになってしまうほどだったそうだ。

 じゃあ1本撮ってみるか、と作られたのが、最初に述べた『朝からカレに求められて…♡ 有馬芳彦』である。
ただし、日本初の女性向けアダルトVRは、AVメーカーk.m.pの『【女性向けVR】飛び出るイケメン!!女性にも癒しを!!』(4月11日発売)であるようだ。だが、イトウ監督いわく、前戯で終わらせず実際にハメたのはうちが最初、だそうである。

 そしてSILK LABOのお二人は、観て、作ったうえで、「むしろ女性向けのほうがアダルトVRに向いている」と述べた。上述の理由から私は耳を疑ったわけだが、聞いてみれば、その話は非常に納得がいくものだった。

 アダルトVRは、まだ技術的な問題があり、あまり激しい動きが取れない。そのため視聴者と同調する女優/男優は、セックスの主導権を相手にゆだねてあまり動かずにいる、いわゆる「マグロ」であることを要求される。したがって、たとえば入院中にエッチな看護師に襲われるとか、「マグロ」でもOKな設定づくりがアダルトVRには求められるわけだ。

 だが、セックスに対して受身であることが男性よりも自然であると社会的に構築されている女性は(その是非は別にして)、「マグロ」である理由付けが特別要らないのである。
これはかなり目から鱗だった。まあ私がなぜこのことを思いつかなかったのか考えてみれば、私がふだん、男性主観で乳首舐め手コキされる、「マグロ」っぽいシーンでばかり抜いているからなのだけれども。だから、こちらから攻めたいという男女はVRにまだ不満を抱くかもしれない。

 なお、バイノーラル録音といって、人間の頭部の音響効果を再現するダミーヘッド・マイクで録音されている点も重要だ。有馬芳彦が自分の耳元で囁いているかのような感覚を得られる。
SILK LABOのお二人の話では、「本当に没入すると、有馬くんの温かさまで感じる」とのことだった。人体とは不思議なものだ。

 それから面白いのは、自分があたかも女優の身体を手に入れたかのような錯覚を得られる点である。かなり巨乳の女優が起用されていたので、自分があたかも巨乳になったかのような気分になれる。
視聴者の体の動きに合わせて画面の女優も動いてくれるようなハイテクノロジーは搭載されていないが(同調するのは顔の向きだけ)、逆に女優の動きを真似しながら視聴することはできる。おすすめである。