「私たち」はAVを卒業できない――「AVは男のもの」が通用しなくなった時代に

「僕たちはAVを卒業できない」

美しい青い瞳でこちらを見つめる東大院生のポルノグラフィ研究ノートのサムネイル画像 Luca Iaconelli

 去る6月17日、有名AV監督5名によるトークイベント、「僕たちはAVを卒業できない」に行ってきた。
出演したのは、「GOSSIP BOYS」を手がけるなど女性向けAVとの関わりも深い嵐山みちる監督、ごっくんモノのフェチAVを専門とする上原亜衣引退作も撮影したタイガー小堺監督、10年以上続く「脅迫スイートルーム」シリーズで知られる沢庵監督「M男監禁パニックルーム」シリーズやビビアンズ作品などのドキュメンタリズムに定評のある真咲南朋監督
多くのAVは、“高尚な”「作品性」といったものは後景に退き、誰が監督しているかなんて気にもされずに視聴されるものだが、この5名はその名前で作品が売れることも珍しくない、第一級の監督たちだ。そしてゲストは、「スカパー!アダルト放送大賞2017」女優賞を受賞したAIKA。本当に豪華な夜だった。

 業界の裏話も興味深かったし、沢庵監督の花嫁候補を客席から募る公開お見合いコーナーなんて腹がよじれるほど笑った。だが、麒麟監督が休憩時間に関係者席に駆け寄って「沢庵監督のアレはほんとにオフレコで……!」と囁いているところなども目にしたので、この場に書けることはあまりにも少ない。
イベントの内容を知るのは、あの夜あの場にいた人間の特権ということで、今回は「僕たちはAVを卒業できない」というタイトルそのものについて考えたいと思う。

「僕たちはAVを卒業できない」というタイトルを聞いて、私はまず「ああ、まさしくそうだ」と思った。私は、AVを卒業できない。遅れて思い出したのは、ヨコタ村上孝之『マンガは欲望する』の前書きである。