女性向けアダルトVRは売れるのか――SILK LABOが撮ってこなかったもう1つの眼差し

女性向けアダルトVRの登場

VR(ヴァーチャル・リアリティ)ゴーグルを装着する女性の画像 Olabi Makerspace

 VRとは「ヴァーチャル・リアリティ」(仮想現実)の略。専用のゴーグルを装着すれば、あたかも目の前に男優がいるかのように立体的な映像が観られるのだ。
SILK LABOからお誘いを受けたので、AM編集部の方と体験しに行ってみた。今回はその率直な感想を綴ることにしたい。

SILK LABOには少なかった「女性主観」

 まず、SILK LABOに行って話を伺うまで、日本では女性向けVRなんてしばらく作られないし、売れないだろうと思っていた。なぜなら、SILK LABOはVRのような主観映像を少なめにしてAVを撮ってきたからだ。
これは、
第1回:AV女優がもつカメラは何を映すか?男女間の不均衡な眼差し
第2回:盗撮カメラとラブラブエッチ――AVを女性向けに編集するとはどういうことか?
第9回:「女性のエロスイッチは視覚ではない」は本当か?――ポルノの男女比較、日米比較
第13回:『シン・ゴジラ』とAVのリアリティ――男優のカメラ目線に萎える女性たち
と、何度も論じているテーマであるが、改めてここで説明しよう。

 男性向けAVは、男優の目の位置とカメラの位置を近づけて「男性主観」で撮られた、男-女を手前-奥に配置する「奥行き」の画面構成を特徴として指摘できる。一方で、女性向けAVは男-女が右-左や、上-下(またはその逆)の関係で置かれる「広がり」の画面構成がとられる。多くのシーンではカップル2人を同時に映し、カメラはセックスに関係ない第三者的な立ち位置に存在するのである。

 SILK LABOの作品は、なぜ「女性主観」で男優と目が合うような作品が少ないのか。その理由についてプロデューサーの牧野江里はインタビューで以下のように話している。

 けっこう女は『この人、撮影現場でカメラに向かってこんなこと囁いてたわけ?』とか冷静に考えて冷めちゃうんじゃないかと思えてきて、男中心にではなくシチュエーション全体を見せる自然な撮影を心がけました。
「特集『女性向けAVの現在形』:アダルトレーベル『SILK LABO』プロデューサー・牧野江里 インタビュー」、太字引用者)

 では、女性主観映像をあまり撮ってこなかったSILK LABOが、なぜVR作品を撮ったのか。