常識だと思っていたオナニーの仕方

「シコる」の女性版が発明されれば日本が激変するだろうという予言は胸を張って言えるが、女性のオナニーの方が男性より謎に包まれているはずだという社会診断には自信がなくなってきた。私は、男性の「ふつう」のオナニーのことだってよく分からないのだ。
これは、「性」に「ふつう」なんてないよね! という大きな話でもあるのだが、もっと単純素朴に、「多数派のオナニー」のことすら意外と知らなかったという意味である。

 以前、酔っ払った女性の友人に、居酒屋でおしぼりを渡されて「服部のちんこの太さどのくらい?」と聞かれたことがある。
エッロ……と思いつつ、私は折りたたんで調整したりしながら、おしぼりをにぎにぎしてみた。結局「ふだんティッシュ巻いてしごいてるから分かんないわ笑」と言っておしぼりを返したのだが、するとその友人に「ティッシュ? はァ??」と言われてしまった。

 いやいや。
ちんこに2枚ぐらいティッシュ巻くだろ、と。
「セックスのちんこ」は素手で触るよ? でも「オナニーのちんこ」を触るの嫌だろ、と。

「はー、女子はまだまだ男のことをなーんも分かってないね。どれ、目にもの見せてやりますか」と思って、自分が変でないことを証明しようと、オナニーの仕方をTwitterのアンケート機能で聞いてみたことがある。
「素手:ティッシュ=6:4ぐらいかな~」と思っていたら、結果は13:1だった。

 私のなかの常識ががらがらと音を立てて崩れ去った瞬間だった。AVの研究をしているくせに、私は男が普段どのようにオナニーしているかさえよく知らなかったのだ。結局男も、オナニーの話をしているようでいて、上っ面を撫でるようなことしか喋っていないということである。
また、「ティッシュ越しに握る」と一口に言っても、私は右手の竿用のティッシュとは別に、(フィニッシュ直前に)左手に精液受け止め用のティッシュを持つ、地球に優しくないオナニーをしているのだが、友人は亀頭に被せたティッシュのすそ越しに竿を握ることで、手淫とザーメンキャッチを片手で両立させるスタイルだった(伝わってるだろうか)。

 Twitterのアンケートなんて、サンプルの偏りとケース数の少なさのせいで大した信頼性もないのだが(だから選択肢の雑さは大目に見てほしい)、これは面白いなと思ってオナニーアンケートをさらに2回行った。テーマは「ちんこを握らないほうの手はどうするか」「精液はどう処理するか」である。

 私は乳首派なのでまたもや少数派だ。というか最近は、逆に「乳首を触らない方の手でちんこを握る」という感覚に近い(私は何を言っているんだろう)。

 紙で拭き取るのはやはり多数派なのだが、それでも77%しかいない。
23%――これは日本人のうち血液型がB型の人間の割合と同じくらいである。
なお、どちらのアンケートも「その他」が多いのは私の質問紙調査のセンスが悪いのもあるのだが、それだけオナニーに多様性があるということでもあるだろう。

 女性AM読者のみなさんは、ぜひプレイの一環として相手に「オナニー見せて」とおねだりしてみていただきたい。えー恥ずかしいよ、なんて言いながらまずティッシュを2枚ドローしたら、彼は数少ない私の同志。
そのときは、ぜひ紹介していただきたい。きっと仲良く語り合えるはずなのだ。

Text/服部恵典

次回は <一徹汁(Ittetsu juice)と女の欲望――「女性向けAV」には映らない愉しみ>です。
女性向けAVの特徴としてコンドームをつけるシーンがあることは、AM読者のみなさんもご存知かもしれません。だから、映像に精液は映らない……けれども、単純に「女性視聴者は汁気が嫌い」と結論付けるのもまた違うようです。最新の論文を参考に、現役東大院生の服部恵典さんがエロメンのファンイベントを分析します!