女性向けAVに挑戦した“鬼畜メーカー”の意図――若き日のしみけんと幻の作品

鬼畜AVメーカーV&Rプランニング

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 女性向けAV V&Rプランニング しみけん 南佳也 ErnieXavier

 以前、「日本初の女性向けAVを探して」という記事を書いた。一言でいうと、日本で初めて女性向けAVが発売されたのは90年であるという指摘があるけれども、88年にすでに女性向けAVが作られていた、という話であった。
今回は、時計の針をもう少し進め、あるAVメーカーに注目して女性向けAV史を論じてみよう。

 そのメーカーの名は「V&Rプランニング」。
有名AV監督・安達かおるが立ち上げ、これまた有名AV監督のバクシーシ山下、カンパニー松尾などを育てたメーカーである。後者2人は、近年では『テレクラキャノンボール2013』でさらに有名になった。

 私の専門である社会学の世界で最も有名なV&R作品は、おそらくバクシーシ山下監督の『女犯2』である。
レイプものの作品なのだが、殴られたりゲロをかけられたりする女優があまりに本気で嫌がっているので「これは演技ではなく本物のレイプを撮ったのではないか?」とフェミニズム団体から猛バッシングを受けたのだ。

『封印されたアダルトビデオ』『セックス障害者たち』で監督本人が語るところによれば、ちゃんと女優に事前許可を取っていたらしい。しかし、騙されていたのはむしろ男優たちの方で、監督から「これ本物のレイプだから」と伝えられていたそうだ。そういう禁じ手的演出を行う「ヤバい」メーカーだった。
V&Rプランニングはほかにも、2008年には『ウンゲロミミズ』という衝撃的な作品を卯月妙子主演で撮り、カルト的人気を博すなどしている(彼女のことは号泣必至の傑作漫画『人間仮免中』でご存知の方もいるかもしれない)。

 なぜこんな、思わず顔をしかめるキッツい作品のことばかり話すのかというと、そんな「ヤバい」メーカーが比較的長いあいだ女性向け事業を行っていたという驚きを共有してほしいからである。

 レイプだのウンコだのを得意としていたメーカーが、女性のためにいったいどんな事業を展開していたのか?