東大院生のポルノグラフィ研究ノート

浮気を肯定する「セックスの天使」――女性向けポルノのパターンとその破れ

現役の東大大学院生男子による女性向けAV研究第4回は、ストーリーの分析。90年代のレディースコミックから続く、「官能によって主人公が女として磨かれる」というパターンは、現在のAVではどのように現れているのでしょうか?

レディースコミックの黄金パターン

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©Joseph Kranak

 女性向けAVを主に分析するこの連載も第4回目だが、これまでは映像を構成する「視線」や社会通念に焦点を当て、ストーリーについてはほとんど触れていなかった。
したがって今回は、SILK LABO作品のストーリーの特徴的なパターンについて指摘することにしよう。

 さてその説明に入る前に、一旦女性向けポルノの歴史を振り返っておく。
今でこそ女性向けAVはSILK LABO作品を中心に一定の人気を誇っているが、それ以前、特に1980年代後半から90年代前半にかけては、女性向けポルノといえば「レディコミ」、つまり漫画が中心だった。
藤本由香里は1992年に「女の、欲望のかたち――レディースコミックにみる女の性幻想」というエッセイ(99年に『快楽電流』 に再録)で、当時のレディコミのストーリーの「黄金パターン」について分析している。

 藤本によれば、主人公の女性を「選ばれた女」であると承認し、「性によって彼女の人生を根本から塗りかえてしまう存在の象徴」としての「運命の男」が登場するというパターンがレディコミには非常に多い。
主人公の女性は「運命の男」に導かれ、官能によって「女」として磨かれていくのである。

 レディコミの時代から約20年が経った現在。
もちろんその間に、日本の女性の性のあり方はずいぶん変化し、多様化した。しかも女性向けAVともなれば、そもそもメディアが違う。
しかし、「運命の男」は女性向けAVにも未だに現れ続けているように思われる。