「セックスの天使」は男に微笑むか?

2013年の作品『クロスロード』は、「Side A」と「Side B」の2部構成になっている。「Side A」は一徹演じるシュンスケが主人公。

「他の女と遊ぶことに口を挟まないこと」を条件にナツメ(水城奈緒)と付き合っているシュンスケの前に、大槻ひびき演じるミステリアスな女性・シオが「私、あなたのことが好きになりました」といって家にあがりこんでくる。
寂しさと強引さに負けたシュンスケがシオと寝た翌朝、シオは「彼女の大切さ、気づきましたか?」と言い残して去っていく。
この「セックスの天使」によってシュンスケが恋人の大切さに気付かされ、ナツメに電話をかけるシーンで「Side A」が終わる。

「Side B」はナツメが主人公で、時間軸的には「Side A」とパラレルである。
シュンスケの浮気癖にさすがに嫌気がさしてきたナツメを、幼馴染のヒロヤ(月野帯人)が慰めてくれるストーリー。よくある一つの幸せのかたちだ。

ただし、注目すべきはラストシーンである。
ナツメは、改心したシュンスケからかかってきた電話を無視して(あるいは電話に気付かずに)、夢中でヒロヤとのキスを続けるのだ。
電話が切れ、一瞬ふっとナツメが微笑んでまた口づけた瞬間、突如切断的にミステリアスなBGMが止まり、映像は暗転、スタッフロールが流れて作品は終わる(個人的に、SILK LABO作品屈指の演出だと思う)。

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ナツメにとってはハッピーエンドかもしれない。しかし、シュンスケからしてみれば、改心の甲斐なく彼女を寝取られ、これほどむなしい結末はない。
あんなに女性を幸せにしてきた「セックスの天使」は、男性には恋人とよりを戻すことを許さないのである。

しかし、この作品が「それぞれが選んだ道・・・どちらが正しいかなんて、誰にもわからない―。」をテーマにしていることに注意しなければならないだろう。
タイトルになっている「クロスロード」は、英語で「(重大な決意をすべき)十字路、岐路」を意味する言葉である。

シュンスケは「セックスの天使」に高い教科書代を払って、いま報われなかったがゆえに幸福になっていくのかもしれない。
ナツメだって、本当は電話をとるべきだったのかもしれない。
ただ観て満足するだけでなく、“セックスを描けるAVだからこその”「考え」て楽しむためのチャンスが、この作品にも眠っている。

Text/服部恵典

次回は《EROMEN LABO番外公開放送イベントレポート――月野帯人という未知、あるいはダイヤモンド》です。

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