セックス・ケミストリーという謎の領域

 雑誌の表紙を飾るモデルのようなイケメンとベッドの上でさっきから戯れているのに、全くムラムラしない。

 20代前半だった頃はどんな男だろうと体が反応した。
あんまり盛り上がらないセックスも若さと勢いに任せればなんとかなった。
しかし、ここ数年で性欲が落ち着いてきたのか、一気に男の好き嫌いが増えた気がする。
どんなに頭でイケると思っても、体の方が拒絶をしてしまうことが多々ある。
老化と共に乳糖を消化できなくなって、乳製品を体が拒絶するのと同じような現象なのかもしれない。
そんな言い訳を口にしたら目の前のイケメンのプライドがズタズタに傷付いてしまうだろう。

「ただ単にケミストリーがなかったんだよ」

 そんな悩みを友達に相談すると必ずこう言われる。
つまり、セックスの相性が合わなかったということだ。
肌と肌が触れても呼吸が荒くならない。唇を重ねてもフィットしない。
セックスの間、ずっとシンクロできずに温度差を感じる。
別に相手に問題があるわけではない。自分もやる気満々である。

 ところが、何か不思議な力に阻まれるように気持ちよくなれない。
お互い忙しい中せっかく時間を作ってセックスしているのにがっかりである。
何より、経験がそこそこある自分はどうしてこのケミストリーを事前に読めないのだろう