セックスは若い人だけのものじゃない

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「なんであんな年にもなって、まだセックスしたがってるんだろう?」

 ゲイバーで友達数人とビールを飲んでいると、少し離れたところにいた中年のおじさんを指差して友達は言った。
そのおじさんは小さなテーブルに一人で座って、空のビール瓶を左手に握って、さっきから周りをジロジロ見ている。
きっと今夜の遊び相手でも探しているんだろう。ゲイバーではさして珍しい光景ではない。

「あの人、僕が初めてゲイバーに足を踏み入れた日にも同じ席に座ってたんだ。もう10年前のことだから、もう50代後半じゃないかな? あんなに必死に若作りして本当に痛い。ジロジロ見られたら気分が悪くなるよね」

 その友達の口の悪さにビックリしていたら、周りも彼に同意していた。
アラサーの私たちはその中年のおじさんからそう遠くない場所にいるのに、どこからそんな言葉が出てくるのか不思議だった。
勝手に決められたセックス適齢期を過ぎた人をバカにすることが、この社会ではフツーになってしまったのかもしれない。
昔から納得できなかったが、どうしてセックスや恋愛はまるで若い人たちだけのものみたいな扱いを受けるんだろう。
そうではない人たちに恋愛やセックスをする権利はないとでも言わんばかりだ。

 トロントに来て間もない頃にハッテン場でこんな場面に遭遇した。
カルキの臭いが充満した薄暗い階段を上っていたら、杖をつきながらゆっくり階段を降りているおじいちゃんとすれ違った。
70歳か、下手するともっと上かもしれない。
あの時、そんな年齢の人がハッテン場で何をしているのかまったく理解できなかった。
タオル一丁でハッテン場を歩き回ってるんだから、答えは一目瞭然だったが、先入観に邪魔されて見えなかった。