私と夫はおやつ、そして食に対する執着が違っている「夫婦とおやつ」/カレー沢薫

今回のテーマは「夫婦とおやつ」である。

先日、アマゾソでポテトチップスを30袋ぐらいまとめ買いをした。
決してその方が得というわけではない、地方の選民のみが利用できる俺たちの「ザ BIG」で買った方が遥かに安いに決まっている。

しかし、己の家計簿を見直したところ、ガチャ代、そして「おやつ代が半端ない」ということが判明したからである。

カップ焼きそばにお湯を入れたあとで「かやく」を入れてなかったのに気づいたが如く、神は私を作る段階で「自制心」を入れ忘れたまま世に送りだしてしまったのだろう、ぜひ後乗せサクサクで良いから入れて欲しかった。

ならば尚更、選ばれし者が集う「ザBIG」で買った方が良いのではないか、と思うかもしれないが、「ザBIG」というでっかい宝島を前に78円のポテトチップスだけを買って帰れるわけがない。
そんなのは乱交パーティに来ておいて、1人とヤったらさっさと帰ってしまうようなものである。
コンビニや「ザBIG」におやつを買いにいけば、ついでに他の物も買ってしまうに決まっている、そして他の物というのはもちろん「おやつ」だ。

よって、通販でお菓子をまとめ買いし「一日一袋だけ食う」というルールにし、コンビニや「ザBIG」に行く回数を減らし、おやつ費を抑えるという作戦である。
この作戦は結構上手くいっており、おやつ費は半減する見通しだ。

だが、大量のポテトチップスが我が家に届いた時、夫のリアクションは控えめに言って「ドン引き」であった。
夫もおやつは食べる人である、たまにコンビニとかでスナック菓子を買っている。
しかし、私と違うのは夫は買った菓子を一週間、下手をすれば一ヵ月ぐらい手をつけなかったりするのだ。
一体この「寝かし」の作業に何の意味があるのか、味が良くなるのか、それとも発酵させることによりカサが増すのか、それとも何らかの神に捧げているのか、と思ったがそういう儀式ではないらしい。

夫曰く「食べたい時に食べるために買った」らしいのだが、その日に食べたいから買ったのではないのか、イマイチ話がかみ合わぬのである。
さらに、夫はやっと食べ始めたお菓子を食べきることなく輪ゴムで止め、さらに一週間ぐらい放置するのである。

そんなの乱交パーティに来ておいて「B」で止めて「また来週」と帰るようなものではないか。
ポテトチップスであれば「フィニる(最後袋に口をつけて残りカスを流し込む行為)」までが「おやつを食べる」という行為だろう。Bのまま一週間放置される相手の気持ちになってほしい。

このように、夫と私は明らかにおやつ、そして「食」に対する執着が違うのである。
食に対する執着というのは「はずかしながら餓鬼道から転生してまいりました!」という、生まれつきの方もいらっしゃるが、やはり「経験」によるものが大きい。

少年期、親から一切の菓子類を禁じられて育った者は、いい大人になって社会的地位を得ても、デスクの中は常に菓子でパンパンであり、レイバンではなくメガネ状になったマーブルチョコをかけて過ごすという。

今のはフィクションであり実在の個人や企業とは関係ないが、他人から見て食べ物とのコミュニケーションが穏やかでなくなっているケースが多い。