エロ禁止の家風は間違ってはないが性知識となるとまた別「夫婦とエロいネタ」

カレー沢薫のカレーなる夫婦生活連載バナー

今回のテーマは「夫婦とエロいネタ」である。

私はこのコラムでも「セクロス」とか、とりあえずインターネット歴が長いことだけは伝わる言葉を使うし、ズバリ「エロ」がテーマのコラム連載も持っている。

漫画でも「需要が世界中どこにもない」ということがわかったので最近は描いてないが、エロシーンを書いたこともある。

そして「推しカプ R-18」でピクシブに対し一日一万回感謝の検索を怠ったこともない。

このように仕事でもプライベートでもエロには割と深く関係している方なのだが、家庭ではどう、というと、もはや「タブー」と言っていいほど夫婦の間にエロネタが出てくることはない。

先日、仕事の関係で我が家に大量のTENGAが届いたことがあった。 普通のご家庭なら、既に水煮したタケノコが送られてきたぐらいの祭になってもおかしくないところである。
だが、それを不意に見つけた夫ときたら、フェスティバルどころか、二親等以内の血族の通夜の顔をしており、無言で元あった場所に戻すという、絵に描いたような「俺は何も見ていないムーブ」をかましたため、こちらも「TENGAを見つけた夫を見なかった顔」をするしかなかった。

つまり、我々夫婦が自らエロネタを口にすることはないし、不慮の事故でエロが闖入してくると「気まずい」の一言という状態になってしまった。

何故こんなことになってしまったのか、夫婦と言えば法律上唯一エロが許された相手なはずである。
大体、私はTENGAを山ほどもらっても、そこに入れるものを持ち合わせていないので、ここで夫に「使ってみる?」とカジュアルに言える関係性を築けていたなら、こんな穴の持ち腐れにはならなかったはずだ。 わざわざ手書きのレターまでそえて商品を送ってきてくれたTENGA広報さんに申し訳が立たない。

しかし、これは夫と上手く関係性が築けなかった、というより、むしろ「家族」という関係性を築くのに成功してしまったせいとも言える。
私の実家も、エロ禁制であり、家族全員が三大欲求の内の1つの霊圧を完全に消して生活していた。
父親はおろか、兄ですら、ごはんですよ的なものを表に出すことがなく、私だけがただ一人エヴァンゲリオンのエロ漫画とかをそこら辺に置いていた。
ちなみにエヴァの原作は見たことがない。

もちろん、そんな家族相手にエロネタを仕掛けることなど出来るわけがなく「家族とはエロい話はしないものだ」というのが染みついてしまった。

夫ともすでに結婚して10年「家族」になったことにより、夫はすでにエロネタを話す相手ではなくなったということだ。

しかし、夫婦間でエロい話ができないのが悪いというわけではない、むしろ話題が下ネタしかない方が問題だろう。
確かに夫とエロい話が出来ないせいで「TENGAを譲渡できない」という痛恨の事態を招くこともあるが、そもそも「TENGAをたくさんもらう」という事態がレアケースだと思う。

例えば、ウンコを漏らしたとしてもそれを誰にも言わなければ「成人してウンコ漏らすなんて自分ぐらいのものだ」と思ってしまうが、それを他人に言ってしまえば、3人ぐらい「あるよね」と挙手するものなのだ。

つまり、どちらか一方がパートナーとセクロスの話、それがダメならせめてウンコの話をさせて欲しいと悩んでいない限りは、夫婦間でエロい話が全くないのが悪いというわけではない。