プレゼントを「贈ったった感」
だが、本音を言えば誕生日プレゼントだって「グーブルプレイカード」がいいのだ。
しかしプレゼントというのは贈る方の気持ちも考えなければいけない。
確かに「本人が欲しい物を買う」がプレゼントの最適解だが、相手が全く「贈り甲斐がない」のも問題なのだ。
昔、まだ私が自分の顔面の皮膚に関心があったころ、誕生日にデパートコスメを買ってもらったことがある。その時の夫のコメントは「形に残るものの方が良かった」だった。
この世に消耗しないものなどないが、化粧品は明らかに消耗品だし、しかも「私の顔面に吸収される」というこれ以上ない「消耗」である。
それよりは単体でも輝くしメルカリにも出せる貴金属とかの方が、贈る側としては「贈ったった感」を感じることができるのだ。
化粧品ですらそうなのだから、グーグルプレイカードなど「運次第でゴミになる」上、相手のソシャゲ依存を加速させるだけなので、贈る側としては全く甲斐がないだろう。
よって服も「着るのが俺」という無常感はあるが、液体や粉末よりはまだ「贈ったった感」があるので、毎年無難に服にしている。
ちなみに、担当は「夫からボッテガのポーチをプレゼントされたのでリクエストしたほうがいいなと思ってリクセスト制になりました。ボッテガのポーチ、調べたら4万とかするんですよ」と言っていた。
このように、女は高確率で贈られてきたものの値段を調べるので、ネットで値段がわかってしまうものを自分で選んで贈るという時点でかなりの悪手である。
贈られてきたものの良し悪しは別として「ふーん、アタシの誕生日は4万か」と、相手に相場を知られるだけだ。
ところで、クリスマス後には4℃のアクセサリーがメルカリに大量出品されるのが風物詩となっているので「プレゼントに4℃のアクセサリーはダメ」という結論になっているが、これは4℃が気に入らなかったというより、4℃を贈ってきた男が気に入らなかっただけではないだろうか。
好きな男からなら1.7℃とか中途半端なやつでも、メルカリには出さないだろう。
ちなみに、私も夫に夫が選んだ装飾品をもらったことは3回ぐらいある。
担当だったら、どういうセンスだよクソが、殺すぞ、と思いながら瞬時に値段をググるのだろうが、私は「食ったことがなさ過ぎてキャビアが美味いのかどうかすらわからない」のと同じように、装飾品というものに触れたことがなさ過ぎて、それがダサいのかダサくないのかわからないので、何か光る石がついている、というだけで、夜店で光る輪っかを見つけた子どもの如く素直に「いいじゃん」と思うことができる。
よって夫に買ってもらったものは、未だに冠婚葬祭の隠し玉として活躍している。
センスがなさすぎるというのも、相手がくれた物に対し、変な感情を抱かず済むので便利な物である。
Text/カレー沢薫
次回は<夫と私は家族になった「今年の誕生日の話」>です。
先日出版したコラムの関係で、AM読者なら誰もが知る大量の〇〇が自宅に届いたカレー沢さん。しかしそれを見た夫の反応は…。
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