人生史上もっとも「ただれていた」期間

家族、恋人、友人と過ごす時間は有意義なものだが、それでも一人で一人の時間をやり過ごせないようではだめだ。ただ暇なだけなら、お得意の「虚空を凝視」「指毛を数える」でクリアすることができるが、暇が孤独や寂しさを呼んでくると、人は身を持ち崩す。

よって、私の「立体感のある男に興味があった期間」というのは、人生史上もっとも「ただれていた」期間のことである。
もちろんヤリマンパイセンのような派手な活躍はできなかったが「おっ!クソオタにしてはヤるじゃねえか(悪い意味で)」というようなことはした。

その後夫とつきあい始めてからは若干落ち着いたものの、結婚しなければ人生リアルツムツムという、手取り12万の地方OLなことには変わりない。
正直、夫と結婚して安定を手に入れる気満々であった。
よって、25歳ぐらいになると、夫にかなりのゼクハラ(ゼクシィハラスメント)をかましていたのだが、私の依存心が透けて見えたのか「ちょ、ま」とはっきり言われた。

だがその後、26歳の時、ラッキーとしか言えない経緯で漫画家としてデビューし、状況は一変した。
会社員と漫画家の兼業生活が始まったことにより、暇がなくなり、関心事はほぼ漫画を描くことになり、会ったこともない同業者のサクセスへの妬みは未だに止まることを知らないが、フェイスブックなどで同級生の幸せを見ても嫉妬を抱かなくなった。

夫との結婚も正直以前より関心が薄くはなっていたのだが、結局我々は結婚した。

その時、夫が「もう、あなたは俺と結婚しなくてもいいと思っているかと思った」と言った。
確かに、それが続くかは別として、瞬間的にはその当時一人で暮らせるだけの収入を得ていた。

それでも結婚したので「流れで結婚した」と各所で言ってはいるが、それなりに確固たる意志を持って結婚したのかもしれない。

それから約十年、私は週の半分は家から1歩も出ず、夫以外とはほぼ誰とも会話していないが、全然平気である。1人でいくらでも時間を使う術を知っているし、それを寂しいことだとも思わないからだ。

ちなみに今の主な鳴き声は「尊い」と「無理…」だが「彼氏ほしい~」と鳴いていた時よりはマシな生物になったのではないか、と思っている。

次回は<自分次第で黄金時代にもなる「黒歴史からの学び」/カレー沢薫>です。
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