私のBGMは一貫して他人の悲鳴である「夫婦のBGM」/カレー沢薫

今回のテーマは「夫婦のBGM」である。

なんなんだこのテーマは。
BGMというからには我々夫婦が画面に入ってきた時に流れ出す曲に違いない。

しかし専用BGMというのはそれなりに重要なポジションのキャラにしか与えられないはずである。
よって私が入って来ても特にBGMに変化はなく、サントラに「日常」と書かれている音楽が流れ続けるだけだろう、もしくは逆にBGMがなくなり「無音」にされる可能性はある。

このように「誰かのBGM」などと言われたら、オタクにとってはそのキャラの登場時に流れる音楽以外の何物ではないのだが、おそらくそういう質問ではないと思われる。

そいつが部屋に入ってきた時、自然にBGMが流れ出す、もしくは流れてないのに聞こえるというのはマツケンクラスにならないと無理だろう。

しかし、その人間がいつもその曲を聞いているため、その曲を聞くとそいつのことを思い出すというような、記憶の関連付けがされることがある。

ちなみに私の最近のBGMは、youtubeの「修羅場まとめ朗読」である。
よって今の私と長い時間を過ごすと、嫁姑の骨肉の争いや不倫サレからシタへの壮絶な報復などの、ただでさえ地獄に私の顔が高速カットインしてくるというPTSDを発症することになるので私と会う時はヘッドフォンとアイマスク着用をお勧めする。

他にも、鉄板だがFXで大損した人のまとめや、最近では不動産投資に失敗した人の声もアツくなってきている。

つまり私のBGMは一貫して「他人の悲鳴」なのである、私より困っている人の声を聴きながらでないととても冷静に仕事などできないのだ。

よってもし私に専用BGMが与えられるなら、私が登場した瞬間、FXでロスカットを食らった人の嗚咽や、不倫現場を押さえられたシタの悲鳴が流れるようにしてほしいのだが、おそらくそれは中ボスクラス以上にならないと無理と思われる。

だが夫婦間においてBGMというのは結構大事なものである。
何故なら音というのは効いてる本人にとっては音楽やテレビ番組でも、一緒にいる相手にとってはただの騒音であることがままあるからだ。

私は無音ではいられない人間なので、一日中何かしら音を出し続けているし、最近ではそれが主に嫁姑ぶっちぎりバトルか不倫野郎の社会的ジェノサイドである。

主体的にそれを聞いている私にとってはゴキゲンなミュージックだが、それを同室にいて受動ジェノサイドを聞かされる人間は普通に気が狂うと思う。

私の親父も音がなければ耐えられない人であり一日中テレビをつけていたが、何度も言ったように、私は父の劣化コピーであり、何もかも父の方が一枚上手なのである。

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