父が一日中流すテレビとラジオ
父はテレビだけではなく、ラジオも一日中つけていたのだ。
しかし、それではテレビとラジオの音が殺しあってしまい両方聞き取れないだろうと思うかもしれない。
それを解決するために、テレビは自分がいる部屋でつけ、ラジオは隣の私がいる部屋でかけていたのである、隣の部屋といってもふすまを開け放った状態なので、音は少し遠くてもちゃんと届く。
つまりテレビのBGMとしてラジオを流すと言う構図である。
何も解決していない。
そして隣の部屋にいる私は一日中結構な音量のラジオと隣の部屋のテレビの音を聞くことになってしまったのである。
私も音がないとダメなのだから、その状況は快適だろうと思うかもしれないが、正直発狂しそうであった。
別にそのラジオから一日中修羅場まとめが流れていたわけではない、親父のことだからAMだろう、しかし人間は自分が好んで聞く音はよくても、自分の意思関係なく聞かされている音は騒音に聞こえるのだ。
ラジオの方は聞いているわけではないので切ってもいいだろうと思うのだが、切ろうとすると怒るのである。
何が悪いかというと、私が無職で親父もほぼ無職で双方一日中家にいた、というのが一番悪いのだが「音」というのは、普通にモラハラになる場合があるので「俺の好きな曲なら相手も好きに違いない」と同室にいて、相手が他に何かしている時に大きな音で何か流すのは控えた方が良い。
話は変わるが、実は夫は登場した時BGMがなる、を実現させている。
私の車にはブルートゥースが入っており、スマホと同期でき、スマホに入っている音楽を流してくれるのだが、何故か私の車なのに夫のスマホと同期しているのである。
よって、夫が私の車に乗り込むと自動的に和楽器バンドが流れだすのだ。
文明の進化によって、我々モブキャラでも「登場時BGM」をつけることが可能になったのだ。
ぜひ皆さまも車に乗り込んだ瞬間ゲットワイルドが流れるような設定にしてみてほしい、私はもちろん他人の悲鳴を流す。
Text/カレー沢薫
夫婦コラムのはずの本連載が、土方歳三への愛を綴った廃人日記として書籍化されました。
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