震災と、あばずれ番外地の思い出/59番目のマリアージュ

三毛猫を抱きしめてうっとりと愛でる女性の画像 Yerlin Matu

皆さんは、怖いものはあるだろうか?

「暗殺者」「狂犬」の異名をもつ担当アサシン嬢は「私は注射とオバケが怖いです」とおっしゃる。
「注射はいまだにガチ泣きしますし、オバケが怖くて夜一人で眠るのが苦手です。夫と結婚して一番良かったことは、家に人がいることですね」とのこと。

私も以前は注射が怖かったが、子宮全摘手術の前後にブッスブス刺されまくって平気になった。何事も慣れは大きい。ちなみに新米看護師でも一発でキマるぐらい、血管が太いのが自慢だ。

オバケやゾンビやエイリアンも平気だ。多分めったに会わないと思っているから。
むしろエイリアンさんはファンなので会ってみたいし、「わあ~やっぱり亀頭にソックリですね!」と握手を求めたい。

私が怖いものは、犯罪・事故・災害である。その手のニュースや映像を観ると気分が悪くなったりもする。
なのに先日、ドラマ『深川通り魔殺人事件』の再放送を観てしまった。観てしまったというか、わざわざ録画して観た。

どうしても大地康雄のブリーフ姿を見たかったからだ。私は子どもの頃から大地康雄のファンなのである。

これは川俣軍治の事件をモデルにしたドラマで、主演の大地康雄の迫真の演技が話題になった。迫真の演技すぎて、その後しばらく猟奇殺人鬼の役しか来なかったらしい。

ドラマ観賞後、私は震える声で呟いた。「ブリーフに釣られて観るんじゃなかった…」
あまりにもドラマの内容が怖すぎて、その後一週間ぐらい震えていた。夜、眠る時は夫にひしっとしがみついた。

ある朝、布団の中で寝ぼけていると、出勤前の夫がラーメンマン(猫)に話しかけていた。
「お母さんが怖がってるから、守ってあげてな」

それを聞いて「生きててよかった」と思った。
十代の頃、私は朝目覚めるのが怖かった。今日も母は酒を飲むのか、泥酔して意味不明なことを言うのか、自分はそんな母を殺してしまうんじゃないか、自分もいずれ母みたいになってしまうんじゃないか。

そんな恐怖を抱えて生きていた。私にとって家は安全な場所ではなかった。母と二人暮らしの生活で「誰も守ってくれない」と孤独と絶望を深めていた。

駅の掲示板にXYZと書いても、冴羽遼は来てくれない。若い人は駅の掲示板なんて見たことないだろうが、古代にはそんな通信手段があったのだ。
ネットもSNSもなかった時代に、私のSOSはどこにも届かないと思っていた。