私の桃鉄に対する温度が2兆度なら、夫は3度である「夫婦で一緒にゲーム」/カレー沢薫

今回のテーマは「夫婦で一緒にゲームをするのはおすすめか」である。

私は夫のことを「自分とは正反対の人間」として書くことが多い。
確かに、社会性に関しては雲泥(うんどろ)の差があるし、夫をキレイ好きと言うなら、私は好きなもの欄に「汚いもの」と書かざるを得ないような汚い好きである。

また趣味も正反対のように言うことが多いが、実は系統的にいうと趣味は似ている方である。
本当に趣味が正反対だったら、夫は週末のたびにサバイバルナイフ1本で森に繰り出すタイプということだ。

ちなみにインドア派にとってパートナーが「アウトドア野郎じゃない」というのはかなりスコアを稼いでくるポイントである。
ひきこもりレベルのインドア派が相手のアウトドア趣味につきあえるのは、つきあい始めて3時間以内ぐらいであり、その後は苦痛でしかない。
よって最近のソロキャンプブームは非常に良いことだと思う、キャンプが好きな奴は勝手に外で寝て、酒が好きな奴は便所の床で寝る、そこにそれが好きじゃない奴を巻き込まないというのが正しい趣味の姿である。
「パートナーなら巻き込んで良し」というのは間違っているし、「パートナーの趣味にはつきあってあげないといけない」と思うのも逆に迷惑だったりする。
パートナーがティファのコスプレをしているからと言って、AVに出てくる人妻が来てそうなノースリーブリブニットを着てクラウドだと言ったらファイナルヘブンを食らっても文句は言えない。
本当に興味があるなら別だが、ないなら「無視」が最善なのである。

夫は私に比べれば外に出るし「庭いじり」そして「掃除」という言葉を選ばずに言うなら異常性癖変態趣味を持っているのだが、異常性癖というのは多数派でないというだけであり、周囲に迷惑をかけてないなら悪ではないし、逆に言えば迷惑をかけられてない奴がガタガタ言うことではない。
むしろ私は夫の異常性癖により、何とか人間の生活ができていると言えるので、これからも何も手出しせず、暖かく見守っていきたいと思う。

そういう特殊なプレイをしている時間以外は夫もゲームをしたりDVDを見たりと私と大して変わらない事をしていたりする。

では、ゲームを一緒にするかというと、全くしない。
正確には1,2回トライしてみたのだがそれが全く面白くなかったので、ゲームは専ら一人か選りすぐりの桃太郎電鉄中毒者とだけやっている。

趣味というのは例え同じでも「逆カプ」のように、主義主張の違いで逆に殺し合う羽目になることもある。
そして「実力差」または「温度差」があると一緒にやっても楽しくないのだ。

私は桃鉄をやる時、常に相手を殺すつもりでやっているのだが、夫は私のことをあまり殺す気がないのである。
殺るか、殺られるか、だからこそこっちも遠慮なく殺ることができるのだが、向こうに殺意がないのにこちらだけ刃物を振り回しているというのは、ゲームを一緒にやっているというより、通り魔と被害者の関係になってしまう。
つまりこちらも刃物を収めてプレイするしかなく、微妙にお互い気を使った接待プレイになってしまい、その結果人数合わせのCPUが無双するという最初から最後まで見どころなしの試合になってしまうのだ。