ふたりとも旅行に向いてないことがわかった「新婚旅行の思い出」/カレー沢薫

推し活で1番つらいこと

ドリフターズ書影

課金が捗らない。

良いことじゃないかと思った奴は、病人への配慮が足りない。

これは「食欲が湧かない」「眠れない」と同列の状態である。

FGOの土方さんガチャが、土方さんを手に入れることなく終わってしまった時点で、私は急速にFGOをやらなくなってしまった。ガチャを回したところで土方さんは出ないからだ。

「そうか、君はもう、でないのか」と、妻に先立たれたジジイみたいな顔でこの1、2ヶ月を過ごした。

よって、今年の課金額は、4月までで累計25万という好調なスタートだったのに、急激に失速。5月はほぼ無課金という体たらくである。

確かに金は減らない。しかし、暇なのだ。

仕事や、やらなければいけないことはクソほどある。しかしやることがあろうがなかろうが、楽しみのない人生は暇なのである。

「虚しさはオタクを殺す」

世の中には、何かに熱中している人に対し、一生懸命水を差そうとする輩がいる。

ソシャカスに対してなら、「それ集めて何になるの、JPEGじゃん」とか「課金額でベンツ買えるし」とかだ。

言った相手は、上手いこと言ってやったと思っているかもしれないが、正直それでダメージを受けるオタクなんていないのだ。

JPEGに金を出しているわけではない。たまたま推しがJPEGに描かれていただけなのだ。

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気になるとしたら「長谷部(言い忘れると思ったか、バカめ。刀剣乱舞のへし切長谷部のことだ)この圧縮形式で推しが苦しくない?PNGの方が良くない?」という点のみだ。

それにベンツなんて欲しくない。もし今までの課金額が全額返ってきて、それがベンツを買える金額だったとしても買わない。じゃあ何をするかというと、同じ額だけガチャを回す。何度生まれ変わっても君を愛する。一億と二千年前から愛している。そのぐらいの気持ちでガチャを回しているのだ。

つまり、他人に言われて「あっこれJPEGじゃん」と気づくこともないし、それで虚しくなったりもしないのだ。

自分は、ガチャを回したり、それで推しが出たときの絶頂感を知っているが、こいつはそんな私を笑うことしか楽しみがないんだなと思うと、かわいそうなのでどうぞ笑ってくれと思う。ただガチャに散財する姿ではなく、単純に顔が面白いという理由なら笑うな。人にはやっていいことと悪いことがある。

他人にどう言われても関係ない。一番辛いのは、自分で疲れや虚しさを感じてしまうときだ。

推しを出すために働いているのに一向に出ない、公式の動きに一喜一憂、キャラの解釈に悩み、自ジャンルの炎上や学級会に心を痛める。

そんな日々を送り続けると、ある日「疲れた…」となるのである。

アレだけ良くも悪くも、心を揺さぶられ続けていたものに、感動がなくなるというのはとても辛いことである。まさしく死だ。

そんな時は、睡眠薬をたくさん飲む前に、一度そこから離れてみたら良いかも知れない。漫画やゲーム、インターネットすらからも。