“復讐心が強すぎる女”を敵に回すと痛い目に!
『ドラゴン・タトゥーの女』

 次に紹介するのは、『セブン』、『ソーシャル・ネットワーク』のデビッド・フィンチャー監督のサスペンス。
本筋とは少し逸れたエピソードで見せる、復讐に燃えるタトゥーの女の恐るべき強さとは?

ドラゴン・タトゥーの女 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

ストーリー

 経済ジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)は、40年前に起こった少女ハリエットの失踪事件の真相の追究を資産家から依頼される。一族の娘がなぜ突然、姿をくらましたのか。
隠された過去に気付きながらも失踪の手がかりを掴めないミカエルは、恐るべき情報収集能力を持つ天才女性ハッカー・リスベット(ルーニー・マーラー)を紹介される。顔色が悪く、痩せて、身体にドラゴンの刺青が彫られている彼女とともに捜査を続けていく中、一族の血塗られた真相を突き止める――。

レイプ魔への壮絶な復讐劇

ドラゴン・タトゥーの女 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

 まず目に入るのは、リスベットの圧倒的な存在感。奇抜なヘアースタイル、鼻ピアス、そしてドラゴンのタトゥー。彼女の外見は簡単に人を寄せ付けないからこそ、その内面に触れたときにドキッとさせられる。
苦しい過去を背負いながら、デキるハッカーとして闇社会で生きる彼女の強さは“復讐心”に宿っているように思えます。

 後見人がいない状態で社会生活を送るリスベットに対し、新後見人という立場を利用してお金で性交渉に及ぼうとする太った弁護士が登場する。
リスベットを自宅のベッドに縛ってレイプするという、なんとも卑劣な男。
しかし、これを逆転するようなシーンが用意されている。

 リスベットは弁護士の自宅に入り込み、彼をベッドに縛ってとことん痛めつける。そしてその身体に強引にタトゥーを彫る。彫られた文字は「私はレイプ魔の豚野郎」。うん、一文字も間違っていないです。

 この見事な勧善懲悪っぷり。更に彼女は生活費を自由に使えるように、「レイプした映像をネットでバラまくぞ」と脅迫する。強いし、恐い。性暴力の被害に遭った女性すべての怒りをぶちまけたような復讐劇が、脳裏に焼き付いて離れないのです。

リスベットの包容力には007もタジタジ?

エージェント・マロリー 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

 ミカエル演じるダニエル・クレイグといえば、殿堂入りスパイ映画でお馴染み『007』のジェームズ・ボンド役。筋肉ムキムキでナイスガイの彼が、風呂場で顔面血だらけでビクビクしているシーンがある。

 そんな彼をリスベットは身体で慰める。『007 慰めの報酬』ってこのことだったのか。ガリガリの体型なのに、ふっくらした包容力にドキッとさせられる。
そんなギャップに萌えたのか、ミカエルも誘われるがまま行為に及ぶ。

 このラブシーンがあるからこそ本作はタダモノじゃない。なんたって、007すら助けてしまう“強すぎる女”を描いているのだから。

 ミカエルがピンチに陥った際、すぐに駆けつけてゴルフのクラブでふり回して応戦するその姿が頼もしい。
二人の愛の行方が、ただのサスペンス映画にさせていないのです。
二つの孤独が寄り添ったとき、女の“強さ”は男を包み込む優しさにも含まれることが分かります。

 リスベットの我が道スタイルの個性の強さは、女の強さにも繋がっているのかもしれない。
髪形もピアスもタトゥーも、全部彼女自身を表しているのです。

エージェント・マロリー

『ドラゴン・タトゥーの女』【ブルーレイ】 デラックス・コレクターズ・エディション
価格:4,980円(税込)
発売&販売元:㈱ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント