愛する人の仇を討つために、愛した人を葬り去るために、彼女は“悪女”になる

悪女/AKUJOレビュー感想 2017 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & APEITDA. All Rights Reserved.

 愛する人がもし殺されたら、愛する人をもし殺さないといけないなら――。
“悪女”は男性を翻弄させる意味で使われることが多いが、この『悪女/AKUJO』において、“悪女”は自らの運命に翻弄されている。
では、なぜ“悪女”なのか? 愛する男、我が子を守り抜くために、その姿に生まれ変わる瞬間を目撃してほしい。

 日本でリメイク化も果たした『殺人の告白』のチョン・ビョンギルが監督を務め、『渇き』のキム・オクビンを殺し屋のヒロインに迎えた新感覚のアクション作品。
『高地戦』のシン・ハギュン、『私は公務員だ』のソンジュンが出演し、ナイフバトルやバイクアクションなど様々なアクションシーンを、キム・オクビンがほぼ全て自ら演じ切った。

“女優”と“任務”の二つの嘘が交錯する

悪女/AKUJOレビュー感想 2017 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & APEITDA. All Rights Reserved.

 アクション映画である以前に、結婚や出産と女性映画として女の生き方を描く。愛する人を守るために血を流す、“情の深い”ヒロイン・スクヒを魅力的に映す。

 いきなり強烈な印象を残すのは、敵対組織のアジトの大殺戮シーン。たった一人で戦地にのり込み、屈強な男たちを全滅させる。主観映像の迫力はもちろん、スクヒの愛ゆえに復讐心を燃やすその表情に圧倒される。
国家専属の暗殺者となったスクヒは整形し、新しい人生を歩むためにカモフラージュとして舞台女優になる。それが“演じる”ことのモチーフとなり、殺し屋としての運命に翻弄される人生から逃れられる唯一の手段として、スクヒは別人になり切って生きる。

 血みどろの復讐劇の中にも、ヒョンスとの淡いロマンスがスクヒの人生にほんの一筋の希望を見出す。
ヒョンスは任務としてスクヒに接近し、彼女を愛する使命が次第に本気で惹かれていく。やがて「スクヒを血なまぐさい人生から解放したい」と願い始め、作品随一の純情なキャラクターがいることでどこか安心する。

 スクヒが女優として演じること、ヒョンスが国家機関の任務を遂行すること。この二つの嘘が混じり合い、さらにある人物の登場によって物語は思いもよらぬ展開を迎える。