“頼らない女”の物語ではない

「すべての命は救えない」とスティーブが止めても、塹壕から飛び出して銃弾が飛び交う戦場を一人歩き出す。不器用なまでに平和を願う彼女の姿に、心を動かさずにはいられない。

 我々は心のどこかで、「戦争はなくならない」と決め付けてはいないだろうか。人と人とは分かり合えず、この世界は争いが絶えないのは仕方がないなんて、どこかで諦観しているかもしれない。

 第一次世界大戦で荒れ果てる舞台から、決して綺麗事では済まされないテーマが浮き彫りとなる。
果たしてワンダーウーマンにとって人間は守るべき存在なのか、その価値はあるのか。ドイツ軍が企む悪事を、ダイアナは食い止める事ができるのか――。

 スティーブとその援軍メンバーがあらゆる場面でダイアナに守られ、友情を超えた関係を築いていく。

 単なるヒーロー映画に収まらない。それは浮世離れした彼女が人間愛に触れることで、強さとは常軌を逸したパワーを持つことではなく、愛する人を守るために引き出されるものであることを教えてくれる。

 元来持っているものではなく、作り上げるもの。ヒーロー映画の新しい常識は、ワンダーウーマンが他者と触れ合うことで生み出されていく。
強いからといって“頼らない女”の物語ではない。人が人として強くあるためには、愛する誰かが必要なのだ。

ストーリー

 女性だけの島セミスキラで、プリンセスとして生まれ育ったダイアナ(ガル・ガドット)。
ある日、島に不時着したアメリカ人パイロット・スティーブ(クリス・パイン)を助けた事から、彼女の運命は大きく変わる。

 外の世界で戦争が起きている事を知った彼女は、平和を願う強い意志から外の世界へ飛び出そうと決意する。
世界を救うためにプリンセスから美女戦士へと成長し、最強のスーパーヒーロー“ワンダーウーマン”になっていく――。

8月25日(金)、全国ロードショー 3D/2D/IMAX

監督:パティ・ジェンキンス
キャスト: ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライト、ダニー・ヒューストン、デビッド・シューリス
配給:ワーナー・ブラザーズ映画
原題:WONDER WOMAN/2017年/アメリカ映画/141分
URL:『ワンダーウーマン』公式サイト

Text/たけうちんぐ

次回は<トラウマではない。余韻とも違う。この感覚こそが“戦場”だ『ダンケルク』>です。
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