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  • 2017.05.03

夢の街“ハリウッド”でさえも結構ダサい恋愛をしている『カフェ・ソサエティ』

1930年代、ハリウッドを夢見てニューヨークからやって来た青年・ボビーは秘書の美女・ヴォニーに心を奪われる。しかし、彼女には思いがけない恋人の存在があった——。ジェシー・アイゼンバーグ主演で贈るウディ・アレン最新作。

ハリウッド アム AM 恋愛
© 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

 ハリウッドの恋愛事情なんて一般人の私たちとは別世界で、お金持ちの価値観なんて常識とかけ離れている。
……なんて思っていたら大間違い。ここで描かれるハリウッドはウブな青年もプレイボーイな業界人も全く同じ。

 恋を目の前にすると、誰だって同じ目をしてしまうのです。


 毎年一本のペースで良作を生み出す、毒を含んだロマンチックコメディの巨匠ウディ・アレン。彼が今回新たに叩き出すのは“黄金期のハリウッド”。誰もが憧れるスイートな世界に、相変わらずビターな一面をも忘れない。

『ローマでアモーレ』でもアレン作品に出演したジェシー・アイゼンバーグが主演を務め、クリステン・スチュワート、ブレイク・ライヴリーといった男を惑わすにはもってこいの美人女優たち、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のスティーヴ・カレルといった多彩なキャストが勢ぞろい。

 ゴージャスな衣装を身に纏っても変わらない、男と女の本性が見え隠れするスリルが味わえます。

ハリウッドでもみんなダサい恋愛をしている

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© 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

 惑わされないで、1930年代の煌びやかなファッションに。
騙されないで、ハリウッドのセレブたちの名声に。

 冒頭からプール付きの豪邸、豪勢な料理が繰り出されるパーティー、ゴージャスなタキシードとドレスといういかにもセレブリティな光景がマウントを取ってくる。


 あぁ、ここは私たちとは住む世界の違う、この世の理想郷だ。きっと華やかで美しく、映画の通りのロマンチックな恋愛模様が繰り広げられているんだわ。
……なんて思ったのも束の間。残念ながら、彼らは結構ダサい恋愛をしていました。

 そんなハリウッドの本性を知らず、華やかな世界に憧れてニューヨークからやって来たボビー。娼婦を呼んだにも関わらず、良心の呵責と宗教上の理由で追い返してしまう。意中の美人秘書・ヴェロニカを部屋に招き入れる前でさえ、緊張のあまり気持ちが落ち着かない。

 そんな純朴なボビーと恋多きハリウッドとのギャップが微笑ましいが、まさかそのハリウッドを司る業界人までも、ボビーと同じような情けなさ全開の恋愛をしていた。

 いい歳こいたおっさんが泣き言を発するなんて。男も女も恐ろしい病気を患ったように、恋愛模様がハリウッドという身ぐるみを剥がしていく。

『夢』が終わって『現実』が始まるが……

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© 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

 女に翻弄され続けるボビーとその叔父のフィル。それを演じるのが『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグと、『40歳の童貞男』のスティーヴ・カレルという、童貞キャラを演じさせたら右に出るものがいない同士で肩を並べているキャスティングが面白い。

 この二人の掛け合いが見事で、世代を越えた恋煩いが黄金期のハリウッドを忘れさせる。そんな前半戦は、名付けるなら『夢』。誰もが思い描くサクセスストーリーをボビーは胸に抱いていた。
しかし、ヴェロニカとの恋が破れた後半戦は『現実』。夢見ていた世界に裏切られた彼が新たな社交場を作り、幻想を追いかけることなく新たな女性と巡り合う。

 ボビーは精神的に大人になる。そこで恋がいかにファンタジックで、現実からかけ離れていることに気が付く。だが、夢は永遠に醒めることはない。運命のいたずらなのか、彼が再びその『夢』のヒロインと再会を果たす。その名もヴェロニカ。夢を忘れさせてはくれないのだ。

 そこで彼・彼女はどう思うのか。
恋の前では上流階級社会であろうともどこの世界でも同じで、その威力に大差はない。
ボビー、フィル、2人のヴェロニカの3つの恋の絡み合いが、「あぁ、結局、私たちと同じなんだ」と少しばかり元気を与えてくれる。

 どんなに小さな世界の恋愛でも、好きな人は“世界一”でしかない。そこにヒロインさえいれば、そこを上流階級にも自分をセレブにも変えてくれる。

ストーリー

 華やかな映画の都に憧れて、ニューヨークから平凡な青年・ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)がやって来る。
業界の敏腕エージェントの叔父・フィル(スティーヴ・カレル)のもとで働き始めたボビーは、フィルの秘書・ヴェロニカ(クリステン・スチュワート)の美しさに心を奪われる。

 あるきっかけでヴェロニカと親密になったボビーは、彼女との結婚生活を夢見る。だが、彼女にすでに恋人がいることを知ってしまう。
やがてボビーは新たにもう一人のヴェロニカ(ブレイク・ライヴリー)と出会うことになる――。

5月5日(金)、TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー

監督・脚本:ウディ・アレン
キャスト:ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、ブレイク・ライブリー、スティーヴ・カレル、パーカー・ポージー
配給:ロングライド
原題:Cafe Society/2016年/アメリカ映画/96分
URL:『カフェ・ソサエティ』公式サイト

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たけうちんぐ 前売り券

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ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家
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