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  • 2017.04.06

人気小説が星野源主演でアニメ映画化!痛々しい作戦で恋は実るか『夜は短し歩けよ乙女』

“先輩”はクラスの後輩である“黒髪の乙女”に思いを寄せる。外堀を埋めることしかできない先輩は空回りを続け、黒髪の乙女は天真爛漫に歩き続ける——。森見登美彦原作×湯浅政明監督の恋愛ファンタジー。

映画 たけうちんぐ 夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦 アニメ 湯浅政明 星野源 花澤香菜 恋愛 ナカメ作戦
© 森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

 めくるめく季節を色彩豊かな景色に、たった一夜を一ヶ月にも一年にも変えてしまう。“黒髪の乙女”は振り向くことなく、“先輩”が勝手に永遠を感じるその風景を颯爽と歩いていく。

 その感情を覚えると世界が揺らぐのだった。恋愛ファンタジーというより、恋愛がファンタジー。当たり前で、時に意外なことに気付かせてくれるのだった。

 第20回山本周五郎賞、第4回本屋大賞第2位に輝いた森見登美彦の小説を『マインド・ゲーム』の湯浅政明監督がアニメ映画化。キャラクター原案に人気イラストレーターの中村佑介も加わり、TVアニメ『四畳半神話大系』のクリエイター陣が再集結した。

 俳優・ミュージシャン・文筆家として幅広く活動する星野源、数々の人気アニメ作品のヒロイン役を務める花澤香菜、人気声優の神谷浩史、芸人・ロバートの秋山竜次らがキャラクターたちに息吹をもたらし、小説の中から飛び出したように個性豊かな人間模様を楽しめる。

ふらふらと酔っ払うように不思議な世界観に酔いしれる

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© 森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

 先輩は「るべく彼女(ノジョ)のにとまる」ように過ごす『ナカメ作戦』を実行する。“黒髪の乙女”に会うために偶然を装い、運命を感じてもらうために。

 痛々しい作戦と思えても、涙ぐましい努力と、回りくどい不器用さと、どうしようもない冴えなさに愛情が湧く。
いとも簡単に成就する恋愛ほど面白くないものはなく、あらゆる障害によって二人の恋路がドラマチックに彩られる。

 とにかくハイテンションだ。次々とシーンが移り変わり、先輩の悶々とした一人語りと、黒髪の乙女の天真爛漫な語りが続いていく。

 最初はそのスピード感に戸惑う人もいるかも知れない。だが、物語が進むにつれてカラフルな色彩と、風情溢れる街並みの京都と、強烈な個性を持つキャラクターたちが織りなす世界観に酔いしれる。
酒豪の乙女に酒で負けるように、ふらふらと酔っ払って、過去と現在と未来を行き来する。

 今が何時か、ここが何処か、私は何者か。
恋愛が生み出すアイデンティティを模索する旅に、先輩と一緒に出かけることになる。

体感時間は93分でも、情報量は180分くらい

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© 森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

 ビールが喉元から体内に入り込んだり、辺り一面が静寂に包まれるように水に浸かったり。湯浅政明監督の得意技というべきか、実写では決して表現できない文学的表現がアニメーションで表される。
乙女と李白との飲み比べ、先輩の辛い物を食べる戦い、性欲との葛藤などファンタジー色満載のビジュアルにより、恋愛する人間の頭の中の視覚化に成功している。

 好奇心旺盛で、衝動的で、純粋。“黒髪の乙女”のキャラクター造形の説得力に圧倒される。
恋に理由なんて要らないけど、この場合は特に要らない。髪型、服装、仕草からして冴えない男子の理想像がすべて詰め込まれている。
インテリで理屈っぽい先輩が太刀打ちできない、理屈を超えた感情が先輩のみならず、多くの男子の心まで蝕むに違いない。

 恋愛とはかくも人を狂わし、雲を掴むような希望と絶望を行き来するものなのか。それに身に覚えがある人なら、このファンタジーにすぐに溶け込むだろう。体感時間は93分でも、情報量は180分くらい。

 乙女の“おともだちパンチ”の可愛さ、二人を繋げる絵本『ラ・タ・タ・タム』を巡る悲喜交々、ゲリラ演劇『偏屈王』による『アナ雪』顔負けのミュージカル。
腹を抱えて笑わせるエピソードが満載でも、先輩の純情で繊細な恋心が貫き通されている。

 大学生が多い京都が舞台であるのも魅力の一つだ。
学園祭の無軌道な連帯感や、時代不明の学生寮の侘しい生活など、よく考えてみると“不思議”でいっぱいの学生生活にはファンタジックに変換できる要素が盛り沢山。

 頭の中ではいつだって自由だ。何を思っても考えても、誰にも咎められない。ただ、行動に行き着くまでの距離が虚しい。
だから、そんな先輩の恋愛を誰もが応援したくなるのだろう。

ストーリー

 大学生の“先輩”(声:星野源)は、クラブの後輩の“黒髪の乙女”(声:花澤香菜)に思いを寄せる。

 “先輩”は「なるべく彼女の目にとまる=ナカメ作戦」を実行し、外堀を埋めていこうとする。が、“黒髪の乙女”はかなりの酒豪で、“オモチロイ”ことが大好き。好奇心旺盛の彼女は様々なことに巻き込まれていき、それを追う“先輩”も不思議な出来事に遭遇していく。

 個性豊かな仲間たちが次々と起こす珍事件に出くわしながら、二人の不思議な夜がどんどん更けていく。
“先輩”の無様で不器用な恋愛は、果たしてどこに向かうのか――。

   

4月7日(金)全国公開

監督:湯浅政明
原作:森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫)
脚本:上田誠
キャスト(声の出演): 星野源、花澤香菜、神谷浩史、秋山竜次(ロバート)、中井和哉 他
配給:東宝映画事業部
2017年/日本映画/93分
URL:『夜は短し歩けよ乙女』公式サイト 前売券 Text/たけうちんぐ

次回は<夢の街“ハリウッド”でさえも結構ダサい恋愛をしている『カフェ・ソサエティ』>です。
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ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

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