ハリウッドの恋愛事情なんて一般人の私たちとは別世界で、お金持ちの価値観なんて常識とかけ離れている。
……なんて思っていたら大間違い。ここで描かれるハリウッドはウブな青年もプレイボーイな業界人も全く同じ。
恋を目の前にすると、誰だって同じ目をしてしまうのです。
毎年一本のペースで良作を生み出す、毒を含んだロマンチックコメディの巨匠ウディ・アレン。彼が今回新たに叩き出すのは“黄金期のハリウッド”。誰もが憧れるスイートな世界に、相変わらずビターな一面をも忘れない。
『ローマでアモーレ』でもアレン作品に出演したジェシー・アイゼンバーグが主演を務め、クリステン・スチュワート、ブレイク・ライヴリーといった男を惑わすにはもってこいの美人女優たち、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のスティーヴ・カレルといった多彩なキャストが勢ぞろい。
ゴージャスな衣装を身に纏っても変わらない、男と女の本性が見え隠れするスリルが味わえます。
ハリウッドでもみんなダサい恋愛をしている
惑わされないで、1930年代の煌びやかなファッションに。
騙されないで、ハリウッドのセレブたちの名声に。
冒頭からプール付きの豪邸、豪勢な料理が繰り出されるパーティー、ゴージャスなタキシードとドレスといういかにもセレブリティな光景がマウントを取ってくる。
あぁ、ここは私たちとは住む世界の違う、この世の理想郷だ。きっと華やかで美しく、映画の通りのロマンチックな恋愛模様が繰り広げられているんだわ。
……なんて思ったのも束の間。残念ながら、彼らは結構ダサい恋愛をしていました。
そんなハリウッドの本性を知らず、華やかな世界に憧れてニューヨークからやって来たボビー。娼婦を呼んだにも関わらず、良心の呵責と宗教上の理由で追い返してしまう。意中の美人秘書・ヴェロニカを部屋に招き入れる前でさえ、緊張のあまり気持ちが落ち着かない。
そんな純朴なボビーと恋多きハリウッドとのギャップが微笑ましいが、まさかそのハリウッドを司る業界人までも、ボビーと同じような情けなさ全開の恋愛をしていた。
いい歳こいたおっさんが泣き言を発するなんて。男も女も恐ろしい病気を患ったように、恋愛模様がハリウッドという身ぐるみを剥がしていく。
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