気持ちよくても満たされない

端的に言えば、したいセックスがセフレとできない。
加えて年齢も重ね始めているため、そろそろちゃんとした恋愛をして結婚なども考えたいと思っているのだそうです。

なんか普通すぎる悩みに拍子抜けしてしまいそうですが、なぜしたいセックスができないのか聞いてみると、意外にも「伝えられない」のだとか。
性を楽しむための相手にしたいことを伝えられないとは、不器用で無意味すぎやしませんか。
一応弁解も聞いてみると「とりあえずシたら気持ちいいし楽しいから」「向こうも希望を持って来ているから」というプロセフレなりの優しさが垣間見えます。が、彼の話を聞きながら私は、「男もセックスで“減るもの”があるだな」と切ない気持ちになるのでした。

できることをして結果を出すか、
したいことをして満足を得るか

よく女はセックスでエネルギーを吸い取られるから、好きじゃない人とセックスしすぎると運気が下がる。的な都市伝説を聞いたことがある人もいると思います。
これと同じようなことが、彼にも起きている気がしたのです。

彼の運が特別悪いわけではありませんが、してもしなくてもいいセックスをすることで、本来したいこと、したい相手に向けるべきエネルギーを放出してしまっているのではと思うのです。

性にかぎらず、人間のエネルギー量は限られています。例えば性とか恋愛に対するエネルギーが100あったとしたら、10ずつ5人のセフレに割り振ると、残りは50。それを本命や本当にしたいセックスにつぎ込んだって、手に入るかは怪しいところ。

これは恋愛でも同じで、「幸せになりたい」と思っているのに、毎日生活のために何かをこなしたり、まあまあ好きな人と会っていたり、極端な話、化粧や美容に時間やお金をかけることだって、正しいエネルギーの注ぎ方かは怪しいところ。
そう思うと、自分の幸せに忠実に生きるっていうのは、ホントに難しいものですが、せめて自分の性癖や愛され方くらい、大好きな人に伝えられる幸せを得たいものです。

去り際、彼は「今気になっている人とどうしたらうまくいくかな…」と、女子みたいな質問を投げかけられました。
どうしたら上手くいくかは、私なんかが答えなくとも、100人の女性を前にしてすでに知っているはず、なのに。
恋愛は百戦錬磨の猛者をも子猫にする。
そんな答えを、雨が降りしきる池袋の街で感じたのでした。

Text/おおしまりえ

初出:2018.09.05