奢られ上手への道

思い返せば私もおごられ下手な人生でした。20代の頃は誕生日にお祝いされるのさえ苦手で、誕生日近辺はなるべく出歩かないようにしていたほどです。お返しをするのが苦痛だったのです。財力も無かったので、いただいたものを返しきれないことも心苦しかったのです。また年上の男と付き合っても、必ず割り勘でした。借りをつくるのが苦手で、対等幻想に取り憑かれていたのかもしれません。それじゃモテないですよね。

でも段々と年齢を重ねて、自分が人におごり慣れてきて実感したのです。おごるということは、そこでイベントとして完結していると。

おごることは、おごられる側の受け取るという行為が無ければ成立しません。相手が拒絶したらおごること、好意を示すこともできないのです。だから相手に感謝しながらおごってあげてください。綺麗事と言われるかも知れませんが、私の場合はそうです。
一番駄目なおごり方は見返りを求めるおごり方です。おごられる方も警戒します。そういうおごりは誰も幸せになりません。

その代わり、おごるときにあなたはにっこり笑いながら相手をよく観察してください。おごられるときにこうやって受け取ってくれたらおごる側は嬉しいなとか、これはNG行為だなということをつぶさに考察します。そういう考察を積み重ねていくうちに、あなたはいつの間にかおごられ上手になっていきます。

あなたが今おごっているのも、先々おごられ上手になるレッスンだと思うと少し気持ちは軽くなるのではないでしょうか。

Text/肉乃小路ニクヨ
記事初出:2018.06.19