大騒ぎしない女がいい女

性犯罪やセクハラに遭いやすい女性は、大まかに2タイプいると思う。見るからに大人しそうで泣き寝入りしてくれそうな子と、軽くかわして気にしなそうな子。共通するのは「大騒ぎしなそう」ということだ。
前者は自覚のある加害者の、後者は自覚のない加害者のターゲットとなりやすい。わたしは典型的な後者だったので、中学を卒業してからもセクハラからは逃れられなかった。いつもヘラヘラ笑ってやりすごしていた。たぶん、それはセクハラ加害者にとって都合のいい「大人な対応」そのものだっただろう。

もちろん、周りにはセクハラに対して真っ当に怒れる女の子もいた。けれど、だいたいそういう子は不当に不利益を被ってしまう。好条件のバイトを辞めざるを得なくなったり、サークルの人間関係が歪になったり、と。
そんな話を聞く度に、決して口には出さないが、「適当にかわせばいいのに」「気にしなければいいのにな」と思っていた。それができない友人たちより自分は大人で、上手に生きられているような気がしていた。
そんな呪いが解けたのは、社会に出て数年、セクハラのほぼない環境に身を置くことができてからだった。

先日、Twitterでこの記事の冒頭と同じく「性犯罪・セクハラの被害を全く受けずに大人になれる女の子が、いったいどれほどいるのだろう」とつぶやいた。

珍しく通知欄を注意深くチェックしていると、「全然可愛くない私でさえ、痴漢に遭ったことある」なんて反応を数件目にした。彼女たちの見た目の美醜はわからないけれど、「性犯罪・セクハラ=見た目の良い子が被害にあうもの」という認識がまだ根深いことを実感した。被害に遭うのは美人ではない。「加害者に不都合な声をあげそうにない女」だ。加害者は卑怯なだけだから。

わたしはもう、セクハラに動じる心は失ってしまった。セクハラを受けても、道に転がるゴミを見た時とほとんど気分は変わらない。でも、誰かがそのゴミに躓いて大怪我を負ったりしないように、さっさとゴミ箱に入れたいとは思う。

痴漢はいるし、セクハラをする男性もいる(もちろん女性の加害者もいる)。だけどそれをしょうがないことと捉えてしまうのは、すべての男性に期待をしていないのと同じだ。男性には、最低限の期待をして良いはずなのに。
これからの女の子たちが、性犯罪・セクハラに遭わない、当たり前の環境で生きていってほしいと願う。

Text/白井瑶
初出:2017.11.09