将来の夢は「お母さんになること」
わたしのキャリアをひとことで言うと「中途半端」だ。就活も仕事もそこそこ頑張ってきたけれど、バリキャリを名乗るには足りないし、腰掛けだと割り切るにはのめり込んでしまっている。
覚えている限り、わたしが最初に抱いた将来の夢は「お母さんになること」だった。当時のわたしは幼稚園生で、母は専業主婦だったから、5歳にして専業主婦を目標としていたことになる。こう書いてしまうと可愛げがないが、幼いわたしにとっての専業主婦は、お花屋さんやケーキ屋さんと同じように望んで就くべき職業だった。
同じような女の子は何人もいた一方で、「お父さんになりたい」と言う男の子はいなかった。彼らにとっての職業はサッカー選手や消防士であり、「お父さん」は意識して目指す職業ではなかったのだろう。
ハッピーエンドじゃ終わらない
セーラームーンを夢見た女の子たちも現実を見るようになるにように、わたしもいつまでも専業主婦にこだわっていたわけではない。小学校に上がる頃には動物園の職員になりたかったし、中学の頃はイラストレーターになりたかった。
憧れる職業はコロコロ変わっても、一貫していたことがひとつある。思い描く「働く自分の姿」が常に20代のわたしであったことだ。30代、40代の自分が第一線で活躍しているイメージがどうしても湧かなかった。30代以降の自分は、当たり前に家庭に入って子育てに奮闘していると信じていたのだ。
社会人として働きだしてから、様々な夫婦を見てきた。羨ましくなるカップルもいれば、泥沼の離婚劇を繰り広げたふたりもいる。結婚はゴールではないと思い知らされた。
冷静に考えれば、結婚前より結婚後の人生の方が長いので当たり前である。わたしの想像力が及ぶのが、結婚というわかりやすい目印までだったというだけだ。
それはおとぎ話の「王子様とお姫様はいつまでも幸せに暮らしました♡ハッピーエンド♡」に近い。幕が下りた後の生活は「幸せ」のひとことでまとめられている。素敵な王子様と結婚したシンデレラは家事と育児のストレスで泣き暮らすことはないだろうし、白雪姫は王子との性格の不一致にも、セックスレスにも生涯悩むことはない。眠り姫は産後に浮気をされたりしないだろう。
でも、残念だけれど、現実はどれも起こり得る。なぜならここは架空の国ではなく不景気の日本だ。魔法はディズニーランドにしかなく、頼りになるのは電波とスマホ。そんな時代に生まれてしまったのである。
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