誰もが行きたい場所は、誰かと一緒に

たいへん誠意のないこちらの店は、食事もいわゆる「観光地値段」で、味は中の下。量も少なめ。「えっこれで1000円?」みたいな。
なんだかもういろいろ納得いかなかったので、ちょっと仕返ししちゃいました。

飲食店の対応に頭グラグラ沸騰させながら、今度は女性スタッフのいる、感じのよさそうな店に入りました。
笑顔で店に入り、挨拶をします。そこでほがらかに世間話などしつつ和久井は、
「ああ、このお店に来てよかった!」
とため息をつきました。
何があったのか、という顔をするスタッフの方。

「さっき心底イヤな目に遭ったので、こんなところ、来なければよかったと思っていたんです」

「こんなところ、来なければよかった」と言われたら、ただ事じゃないですよね。ほがらかに会話を楽しんでいたお客さんが言うのならなおさら。
スタッフの方は驚いたように「どこの店ですか?」「何があったんですか?」と聞いてくれました。しめしめ。
で、なるべく感情的にならないようにしながら「こういうことがあり、自分はとても不愉快になった」「店は××というところでした」と報告しました。

そうしたら「観光協会にクレームを入れといた方がいいですよ」と教えてもらったので、電話をしました。
客に対して横柄な店は、普段の態度も同じようで、店名を告げると、
「ああ……、××さんね……」
と誰もが深くうなずいていました。

「なんだ、みんなに嫌われているから、ますます横柄なんだな、可愛そうに」
と考えて(まあそのくらいじゃ怒りは収まりませんが)、その地を去りました。

誰もが行きたい場所は、誰かと一緒に行けるチャンスが必ずあります。
インスタント観光地はやたらカップルも多いし、はずれ店も多い。失敗した時にダメージの大きい場所は、仲間のいないおひとり旅にふさわしくない場所なのです。

おひとり旅には、おひとり旅にふさわしい場所があるんですね。
次回は、そんな話を。

Text/和久井香菜子

※2017年2月15日に「SOLO」で掲載しました