彼のママと仲良くなりすぎた…人生で一番好きだった人

高校を卒業したハナちゃんは、「心配をかけまくった母親に早く恩返しをしたくて」花形だった大手百貨店に入社した。
そして入社してすぐ、飲み会で出会った男と熱烈な恋に落ちる。
その男は、「今まで出会ったことないくらいにお前が大好き!」なんて素直な言葉をくれる、漁業に携わっている人だった。熱い彼にハナちゃんも一瞬でのめりこんでいった。しかし付き合って4カ月後、彼が実は既婚者だということを知る。ハナちゃん20歳、彼は22歳だった。

「すぐ離婚するって言ってくれてさ、まだ若いから逆にもっと燃えちゃうというか。私のために別れてくれるなんて! みたいな」

そうして男は実際に別れた。そこから、ハナちゃんは関西の彼の実家に通い出す。

「旅行なんてなくて、イコール彼の実家に直行。お義母さんもすごいかわいがってくれて、もう私も有頂天よ。どんどんお義母さんと仲良くなって、彼が地元の友達と遊び歩いていても、“ママがいるからいい!”“ママと出会えたと思ってる!”って」

彼氏のお母さんはその頃末期がんで、ハナちゃんは完全に看取る気でさえいた。もう、娘の気分だ。「すると何が生まれると思う?」とハナちゃんは私たちに問いかける。そこまで彼の母親と仲良くなって、何が生まれるんだろう。

「私がね、お義母さんに彼の悪口を言っちゃったの。“聞いてママー”って。完全に家族みたいに思ってるから、ちょっとボヤいちゃったんだよね。でもお義母さんにとっては、愛しの息子の悪口を他人が言ってくるって図式になる。それで、ムカつかれちゃった」

「ハナちゃんが隠れて悪口を言っているらしい」との情報を母親から手に入れた彼氏は、ハナちゃんをフッた。2年付き合いが続いた22の時だった。ショックで10キロも痩せ、長い髪の毛をバッサリ切った。そこからずっと今まで、髪を伸ばせないでいる。

「20年経ってるけど、あの時別れを受け入れなければ良かったって今でもたまに後悔する。今でもいっちばん好きな人」

その人とは連絡も取っていないし、何をやっているかも知らないという。

「共通の友達に彼のことを聞いても教えてくれないから、なんとなく彼はもう死んでいるような気がしてるんだ」

それでも彼女は、「今でも一番好きな人」と幸せそうな顔でいう。好きな人のことを語る時って、やっぱり人間はとても素敵な顔をする。

ハナちゃんも、私も、その場に居る全員が「一番好きだった人とはうまくいかなかった」という過去を持っていた。

「歴代1位の人とは結局うまくいかないよね。私も2番目の人と結婚したもん。あんまりに好きだと、結婚とかいうレベルじゃなくなっちゃうもん」

そうだよね、と全員で過去の恋を振り返る。一番好きな人なんて、好きすぎて不安になって、ワガママも言えなくなっちゃうもんね、と。

どんどんどんどん杯が空く。
美味しい食事もどんどん平らげられていく。取材費の範囲を軽く超えているのに気づいていても、もう流れは止められない。

ハナちゃんの話はやっとダンナさんとの馴れ初めに到達した。
飲み会は、3時間を経過していた。それでも全然聞き足りなかった。だって、すぐこちらに話を振って自分の話を本当にしてくれないから。ほかの人もいる中で自分の話ばかりするのは違和感がある…それはきっと、大人のすごく真っ当な感覚。
それでも質問をし続けた先には、あまりにも興味深い人生観があった。次回は、「最愛のダンナもいれば彼氏もいる話」から、「不妊治療の実態」まで。

自分の運命をとことん受け入れ、今を全力で楽しむ女の姿は、聞き手を幸せな気持ちにしてくれるほどであった。40を超える人の語る言葉は、すごい。街ゆくリアルな恋バナがここにある…!
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次回は<「若い女に乗り換えたら刺す」でプロポーズ。先輩女子が語る結婚の先>です。
初めましての恋バナ図鑑、中目黒で出会ったハナちゃんの第二回は「忘れられない、今でもいちばん好きな人」と別れたあとに出会った現在の夫とのエピソード。「好きだけど、ディープキスはできない」という彼女がそれでも取材スタッフに結婚を勧める理由とは?