学生時代の恋愛ヒエラルキーは15年は変わらない!?強者は30前半まで強者のまま/脚本家・狗飼恭子インタビュー『百瀬、こっちを向いて。』

映画『百瀬、こっちを向いて。』をはじめ、数多くの作品を世に送り出した脚本家、そして"恋愛を考えるプロ”である恋愛小説家の狗飼恭子さんにインタビューを伺いました。


 映画『百瀬、こっちを向いて。』をはじめ、数多くの作品を世に送り出した"恋愛を考えるプロ”脚本家の狗飼恭子さんにインタビューを伺いました。
映画『百瀬、こっちを向いて。』のレビューはこちら

「女として扱われることが嬉しい」女性の機微を

百瀬、こっちを向いて。狗飼恭子 映画脚本 小説家 スペシャルインタビュー


――原作と結末が異なるとのことですが、脚本執筆にあたり、特に気をつけた点はありますか?

狗飼恭子さん(以下、敬称略): 原作も監督も、主人公も男性の小説なので、私が脚本家として呼ばれた理由は、女性の気持ちを物語に盛り込むことなんだ、と思ったので。
原作には主人公ノボル君の気持ちが十分に描かれているので、百瀬や、神林先輩といった女性側の小さな感情の機微を作るように考えました。

――百瀬がたくさんの兄弟の長女というのは、納得感がありました。
兄弟をあえて登場させるというインスピレーションはどこから?

狗飼: 百瀬みたいに自己主張があり、好き嫌いが見えている子にとって、みんなが憧れているからという理由だけで宮崎先輩を好きになったんじゃないと思って。
じゃあなぜ、先輩を好きになったのかと考えていったときに、百瀬が普段もらっていないものをくれる人だからだ、と。
普段お家では、小さなお母さんとして子どもたちの面倒を見ている彼女を、先輩は小さな女の子として見ている…つまり女として扱ってもらえるってことに初めてを感じて、とても幸せだったんじゃないかなぁと思ったんです。

――登場人物の中で感情を入れて作り上げたキャラクターは?

狗飼: 宮崎先輩の恋人である、神林徹子を書くのはすごく楽しかったです。
『百瀬、こっちを向いて。』の肝は「高校生の恋愛物語だけじゃない」というところだと思うんです。物語の鍵になっている神林徹子が魅力的になるように心がけました。
百瀬や宮崎先輩の気持ちに気付いているか、いないのかのという微妙なラインを保たせて書いたんです。 徹子さんの話だけを拾うとミステリーみたいになってしまいますね(笑)。

――男性のキャラクターで特に力が入った登場人物は誰ですか?

狗飼: わりと原作のままですが、田辺くんというノボルくんのお友達ですね。彼も書くのがすごく楽しかったです。
物語をロールプレイングゲームのように例えるシーンが作中でもあるんですが、田辺くんは私の中でドラクエの「ホイミ」という回復魔法をかけてくれる人なんです。例えば、ノボルがお腹が痛い時は心配してくれるし、お金を忘れたら貸してくれるし、弱っていたらドーナツをくれるというように。
ノボルがレベルをあげた時や、死にかけた時に、ちゃんと回復させてくれる友達という風に考えて作りました。

――女性の場合、彼氏がいる・いない、既婚・未婚で付き合い方が変わり、田辺とノボルのような友人関係を維持することが難しくなってしまうこともあると思うんです。
女同士でも田辺くんみたいな存在でいるためには、どのように接していくことが大切ですか?

狗飼: 田辺くんのすごいところは、ノボルに質問をしないところなんです。ノボルが言ったことにだけに答えている。
「彼女と付き合うことになった」と言われたら、「えっなんで!どうして?」って聞きたくなっちゃうと思うんですけど、「そうなんだ」としか言わないんです。
質問をせずに、相手の話したいことだけを聞いて、何を欲しているのかを見ているんですよね。そういう人間になれたら、友達とも仲良くいけるんじゃないかなと思います。

――いい子なんだなと、改めて思いました。

狗飼: 田辺くんには幸せになってほしいですね(笑)。