起きなきゃいけないときの布団は、優しいだけのセフレに似ている

大泉りかコラム

この時期、我々を惑わせる憎いあンちくしょうといえば、なんといっても“布団”ではないでしょうか。さっさと起きて準備をして出掛けなくてはならないと頭では理解していても、その暖かで柔らかな肌触りに抗えず「もう少し抱かれていたい……」と堕落してしまう。

しかし、毎朝ママに起こしてもらってイヤイヤ学校に行く子どもではなく、もう立派に毛も生えそろった大人なので、ダラダラすればするほど、その後がしんどくなることをわかってもいる。なんせ家を出る時間までに、歯をみがき、顔を洗い、化粧をして、髪の毛を整え、服を着替えなくてはならないし、布団に長く滞在すればするほど、それら身支度に費やす時間が減ってしまう。理性で欲を抑え込み、決意を決めてエイヤッと布団から出た瞬間には、案の定、「ああ、もうあと5分、布団から出ておけばよかった」という後悔が襲ってくる……。

「ずっとはいれないことはわかっているのに、なぜあんなに執着をしてしまったのだろう」って、優しい上にセックスも上手で最高なのだけど、一緒にいてもなんの進展も望めないセフレに見切りをつけたときのような気持ちに毎朝見舞われる冬は、なんという試練の季節なのでしょう。

というように、布団が非常に魅力的なことは重々承知の上ですが、それでも腹が立つのは、予定の時間が差し迫っているというのに、いつまで経っても布団の中にいるパートナーです。いまの夫は寝起きのいい人なのでストレスがなくていいですが、これまで付き合った何人かは非常に寝起きが悪かった。

パートナーがなかなか起きない問題

もちろん、基本的には、他人が何時まで寝ていようが知ったことはないけれど、一緒に出掛ける予定があるのに、いつまでも起きてくれないのは非常に困ります。「予定をキャンセルしたい」とか「今日は俺は辞めておくから、ひとりで行ってくれば」などと、せめても一緒に出掛ける予定を撤回してくれればいいけど、「行く。起きるから待ってて」というのならば、そういうわけにもいきません。

なので、仕方なく幾度となく、声を掛けて起こすことになるのですが、なぜか起きたくない人って、自分を起こす人のことを悪者扱いしませんか。その理由は、起きると約束したのに、起きられないで相手に迷惑をかけている自分に罪悪感を感じているせいだと、勝手に思っているのですが、「お願いだから、寝かせてくれない?」とか「うるさいなぁ」とか、なぜ、“俺と布団の間を切り裂こうとしている悪者”のような扱いをされなくてはならないのでしょう。しかも前日に「明日は起してもらえる?」と頼まれていたのに、逆ギレで対応された日には、もう二度と起こしてやるもんか!!!ってなもんですよね。