夫をセクハラオジサンにさせない

 2人の価値観が合わないのは政治のこと。最近はありませんが、以前は投票に行く道すがら、なんとなく「誰に入れるのか」という話をすることがありました。別に隠すことでもないので「〇〇さんと、比例代表は〇〇に入れようと思っている」と口にすると、大概「えっ!マジで?」と驚かれるのです。尋ね返すと、今度はわたしが「えっ!マジで?」と驚く番です。

 ……が、政治的な価値観があわないなんて仕方ないことです。夫といっても他人だし、そこで討論する気まではありません。夫婦であっても考え方はそれぞれ別であっていいと思うのです。

 という前提がありつつも、最近、どうしてもなんとかしたいと思っていることがひとつだけあります。それは世の中を騒がせている「男性の下半身問題」。レイプ被害を実名で告発した伊藤詩織さんの事件や、ハリウッドのセクハラ騒動、そして女性記者との会食時に「おっぱい触っていい?」「キスしていい?」「手縛っていい?」といった福田事務次官の発言の録音データ、山口メンバーの未成年強制わいせつなどなど、ここ最近、女性へのセクハラ・性暴力が表面化してきて、メディアでも連日報道されています。

 世の中がものすごい勢いで変わってきていて、それはとても素晴らしいことだと思うのですが、一方で「ハニートラップ」だとか「枕営業」、「後から訴えるとは」など、女性側を非難した、反発の声も同時に耳に入ってきます。男性ばかりでなく、女性であってもそう唱える方もたくさんいますし、それはそれで、その人の考えだからいいと思う。だけど、自分のパートナーがそっち寄りの考えなのは、ちょっとしんどい。

 というのも、まだ若ければ、誰かに意見されて、これから考えが変わるチャンスもある。けれど、わたしのパートナーはもう「オジサン」です。これから先、誰かに叱られることはもうほとんどないだろうし、「その考え方はどうかと思う」と苦言を呈されることもないでしょう。ということは、対等な立場にあるわたしがうるさく言わなければ、女性が普段からどういう視線に晒されているのか、どういったことに苦しんでいるのかを知るチャンスが、永久に失われてしまう。

 つまり、パートナーを「セクハラするオジサン」にさせないということです。パートナーが、世間の女の子たちに「セクハラするオジサン」として厭われるのを止めることは、わたしがすべき役割だし、1歳になる息子を、性差別的なバイアスを持たない人間にするためにも、絶対に必要なことです。

 というわけで、ニュースが流れるたびに「でも、これって女の方も……」と言うパートナーに、時にダイレクトに、時にオブラートに包んだ形で「どんな状況であれ、相手の了承を得ず性的なことを言ったりしたりするのは犯罪」というメッセージを送り続ける今日この頃です。

Text/大泉りか

次回は<「相手の年齢を考えろ!」プロポーズのタイミングを計れないボンクラな男性>です。
プロポーズの言葉を聞いてない!という大泉さん。そもそも定義や憧れも男女でバラバラなので、たまたま合致することに賭けるほうが大変なのかも。そして、プロポーズを1年先延ばしにしようとする男友達に叱責の言葉が……。