高校のとき、文通していた女の子がいました。好きだったと思います。
あまりファッションとかに興味のない、よく言えば純朴な感じの文学少女。まあ、男子校の文芸部所属の冴えない男と付き合ってくれるような相手なので、そこらへんは推して知るべし。でも僕は彼女のノーメイクでこざっぱりしたメガネ顔が、愛嬌があって気に入っていました。
受験の忙しいさなか、学校の違う僕たちは週3ぐらいで長い手紙を送り合っていました。ああ、若い子に伝えたくもないが、そのころはLINEどころかメールどころか、携帯電話さえなかったんだよ。
そして、卒業。
晴れて二人とも都内の大学に合格し、それぞれの新生活を始め、文通のペースはがくっと落ちてました。大学生になっての初デートは、渋谷。
彼女は、コンタクトに変えていました。それどころか、潤い系のリップと、濃い目のチークを塗っていて、イメチェンを狙っていました。
まったく似合っていませんでした。
戸惑いました。いま思えば、一生ノーメイクのままでいられるわけもなく、ここから研究して練習して、さらに美しくなるための輝かしいスタートだったのだから、静かに応援していればよかった。
でも、当時の僕はそれをほめる優しさも、あえて口にする勇気も持っていませんでした。
おかしな態度だったと思います。たぶん、感じた違和感がそのまま態度に現れて、そっけない対応になっていました。
その日、「ササキくん、なんか変わったね……」と言うひとことを残して、彼女は僕の人生から去って行きました。
……なんて、中年の感傷など参照にするまでもなく、今年も「卒業」という儀式が、恋の終わりをつぎつぎと生産しているようです。
「卒業にまつわるもやもやする恋愛エピソード」をいただき、そのもやもやした思いを短歌にして発散させようというこのコーナー、今週は、リアルタイムに進行している恋の話ばかりが届きました。
ではさっそく。