「57577」で恋の怨霊を成敗!

「あ、私じゃない人とも、こういうことしてるってことだ……」

「私にとっては人生最高の思い出だけど、彼にとってはいつも通り、計算通りのデートをこなしてるだけなんだ……」

「彼にとって私なんて、たくさんいる女の一人にすぎないんだ!」

脳内に住まう天才高校生探偵が「謎はすべて解けた!」とばかりに、彼の供述の小さなボロから、次々と巨大な陰謀を(そんなものはなくとも勝手に)解き明かしてしまいます。 ああ、私の脳内の金田一一も憎いがうかつなお前はなお憎い。

いやいや、ここは素直にキスされておこう、といったんは飲み込むものの、いや、飲み込んだが故に、心の中で怨霊はすくすくと育ちます。

「彼」じゃなく「元彼」になっているということは、もしかしたらこういう小さな「おや?」という気持ちが徐々に大きくなってお別れを招いてしまったのかもしれません。 だとしたら恐ろしいですね。

こういう思いは、もやもやが肥大化する前に、言葉という霊障レーダーできっちり捕捉し、みんなと共有して笑ったり泣いたりしてふっ飛ばしてしまうことが大切です。
誰かのつくったラブソングに自分を代弁してもらうのも悪くないですが、「57577」の怨霊捕獲マシンをつかって、自分で短歌にして自分で祓ってしまうのも、かっこいいんじゃないでしょうか。

というわけで、坂輪さんがご自身でこのエピソードを短歌にしてくださった作品はこちら。

「天辺じゃなく二時頃が見えない」と君がキスする何度かの聖夜(坂輪)

あ、これは危険です! あなたに取り憑いた観覧車の地縛霊がまだしっかりと描ききれておりません!
おまけに少し美化されていて、真の怨霊はあなたの無意識に巣食ったままです。

実際よりも美しく描かれた短歌ももちろん素晴らしいのですが、ササキとしてはむしろ、自分のエゴや苦しみの細部にくっきりピントを合わせた短歌を追求していきたい。 というわけで、その恋愛怨霊メモリーのお祓い、助太刀いたします!