「天然のモテ」だからA子に嫉妬しまう私たち

 A太郎もそうだったが、A君もまたA子に対し尊敬の念を抱いている。つまり彼らふたりは、「尊敬できる女を愛したい王子様」なのだ。
地味でも、優柔不断でも、尊敬ポイントがあれば愛されるということは、女子にとって希望かもしれない。が、尊敬されるのが実は一番むずかしいのではないか。他人が自分のどこを尊敬するかなんて予測できないし、尊敬されたいからとがんばりすぎるのは、はっきり言ってイタい。あくまで本人は無意識、無自覚なのに尊敬されてしまうというミラクルが起こらなければ、A子のようにはなれない。

 ふたりの王子様は、好かれようと思えば思うほど、遠ざかっていってしまう、なんとも女子泣かせの王子様である。
実際、作中にA太郎のことが大好きな女「あいこ」が登場するが、A太郎は一ミリも興味を示さないし、A君も、家に招いた女「ブリトニー」が超わかりやすいアプローチをしてきたにも関わらず、帰宅させている。いやー、難攻不落! 好かれる分には構わないが、好きになったら地獄である。

 いずれおとらぬ好男子だが、素人がうかつにハマってはならない。遠くから見ているのが吉……そういう王子様もいるのだ。そして、そんな王子様に惚れられたA子が心底羨ましい。なぜって、これこそが「天然のモテ」だと思うから!

Text/トミヤマユキコ

次回は<トミヤマユキコさんが一番推したい王子様『関根くんの恋』>です。
AM読者のみなさんに「このマンガの王子さまステキだよ!」と推すトミヤマユキコさんの連載。今回はついに、トミヤマさんが個人的に一番好きな王子さまをおすすめします!第3回ananマンガ大賞を受賞した、河内遙『関根くんの恋』(単行本全5巻)の主人公、関根圭一郎の魅力とは?