親が子供の意志を侵害してはいけない

相談文から、あなたの母親は過保護かつ過干渉で、暴力や恐怖を与えることで娘であるあなたの意志を抑えつけ支配しようとしているように伺えます。
あなたを苦しめているのは、まぎれもなく常軌を逸した接し方を続けてきた母親が原因でしょう。自分の親に対してそんな言葉を投げかけられるのはきっとつらいでしょうが、まずはそのことを認識してほしいと思います。

性教育を受けておらず、性交渉に付随するリスクを知らない年齢だったり、性交渉をしたことによって生じる責任を自分で取ることのできない年齢や立場であれば、望まない妊娠や性被害を防ぐために、親の介入は必要となります。
しかし、あなたは学生という身分ですが、24歳で成人を越えているわけですから、たとえ親と同居していようが、ひとりの大人として扱われます。その大人であるあなたが恋愛するかどうかを、他人はおろか親ですら侵害したりコントロールしてはいけないはずです。
だから、母親が「学生のうちから誰かと付き合うなんて……」とあなたの恋愛を咎める言動は、決して親心で心配しているのではなく、自分本位な考えによるもののように感じました。

親に限らず、誰かからの支配というのは、ほんとうに恐ろしいものなんです。
結婚や就職など人生を左右するような大きなものであれ、今日の夜ごはんや朝着て行く服など小さなものであれ、何かを決めるときに「自分を支配している存在はこの選択をどう思うか」と無意識的に基準としてしまいます。
自分を支配する存在、あなたの場合は母親ですが、様々なポイントで“お母さんはどう思うか”という考えが、常に付きまとっているのではないでしょうか。
自覚されているように、誰かと親密になったときに「こんなこときっとお母さんが許さないだろう、だからしてはいけない」「お母さんの意志に反することをしたら殴られてしまうかもしれない」という恐怖による罪悪感が生まれてしまうため、誰かとお付き合いすること自体が“よくないもの”という認識になっているのかもしれません。
これはあなたひとりの力で払拭するのはとても難しいことなので、誰かの手を借りてほしいなと思います。

専門的な知識を有している人の助言を

今回の相談に対する結論としては、第一に然るべき機関に相談をしてください。
厚生労働省の相談窓口でも、心療内科のカウンセリングでもかまいません。

こうやってわたしに相談をしてくれたことをとてもうれしく思います。
わたしはあなたの味方ですし、心から幸せを願っていますし、いつだって背中を押したいと思っていますが、この限られた中であなたの深層心理にまで辿り着いて苦しみを全て取り除き、支えることはどうしてもできないのです。
今のあなたに必要なのは、専門的な知識を有している人の助言だと思います。

きっと、外部へ助けを求めることに少なからず抵抗感があったり、大きなエネルギーを要するでしょう。
でも、今回わたしに相談するという勇気ある一歩を踏み出したように、専門家に相談するという二歩目も踏み出してほしい。誰かに相談すること、手助けを求めることは決して恥ずかしいことではないと、知っておいてください。
ちなみに、相談機関と銘打っていながら営利目的としているところも中にはあるので、調べるときはくれぐれも注意してくださいね。

また、国が推奨する相談窓口やカウンセリングを行っている心療内科だとしても、もしかしたら話を聞いてくれる人との相性が合わない可能性もあります。
その場合は、「やっぱりだめなんだ」と諦めてしまうのではなく、大変かもしれませんが「この人(場所)だ」と思える人と出会えるまで根気よく探していただけたらと思います。

母親からの影響を断ち切るとなると、やっぱり精神的にも物理的にも距離を取る必要があるでしょう。近くにいれば、それだけ影響を受けやすいですから。
現在の日本の法律では親子の縁を切ることはできませんが、選択肢として分籍や接見禁止令などの手段で物理的な距離を取ることもできるということはお伝えしておきます。
でも、現在あなたは学生で、親と同居しています。
叶うことなら離れた場所で一人暮らしをしたほうがいいかなと思うのですが、おそらく事情があってすぐに家を出ることは難しいでしょう。
なにより、これまで長く支配される生活を送ってきたため、親と物理的な距離を取ることに躊躇するかもしれません。
恋愛や勉強に対するものと同じように、「実家を出ることを母親は許さないのではないか、それによってひどいことをされてしまうかもしれない」「ここまで育ててやったのに~なんて言われてしまうと、申し訳なくて何も言えなくなる」など、罪悪感に苛まれる可能性があります。
あなたは、自分の人生の選択は自分でしてよくて、それは何者にも咎められる必要性はないはずなんですが、とても困難だと感じてしまうかもしれません。

毒親に育てられた人や虐待を受けた人の多くは、親と物理的な距離を取ることに罪悪感を覚えたり、自分を責めて苦しくなってしまうことがあります。
わたしの周りにも、毒親に育てられた人、大人になって自立した今も親との関係性に悩み続けている人がいて、そういった様子を目にすることは少なくありません。
そういった気持ちに陥ってしまったときに、親からの支配を表面上でも受け流したり、自分は間違っていないと肯定したり、物理的だけではく精神的にも距離を取れるようになっておいたほうがいいのではないでしょうか。
まあ、物理的な距離を取ることで心の余裕が生まれ、精神的な距離を取りやすくもなるので逆もまた然りではあるのですが。
そのためにも、やっぱり専門家に話を聞いてもらうことはとても重要、むしろ必須ではないかと思います。