生涯未婚時代?私たちが自分らしくいられる場所へ。永田夏来さん×紫原明子さんイベントレポート

対談『結婚と家族にしばられない生き方って? ~「呪い」の言葉をはね返す「白魔法」~』の様子

9月22日、『生涯未婚時代』を上梓された社会学者の永田夏来さんと、エッセイストの紫原明子さんによる対談『結婚と家族にしばられない生き方って? ~「呪い」の言葉をはね返す「白魔法」~』が開催されました。会場には女性だけでなく男性も、また独身だけでなく既婚者や妊婦さんの姿もあり、後半のワークではそれぞれの立場から活発な意見交換が行なわれました。こっそり会場に潜入していた私(チェコ好き)が、このイベントのレポートを担当します。

結婚して、パートナーを得れば「成熟」できるのか

対談『結婚と家族にしばられない生き方って? ~「呪い」の言葉をはね返す「白魔法」~』の様子

とある結婚情報誌が「結婚しなくても幸せになれるこの時代に」というメッセージをCMに入れたことからもわかるように、「結婚しない生き方」も、一昔前と比べると世間でだいぶ理解が進んできました。しかし、未だに20 代の女性で「30歳までに結婚したい」と強く願っている人が多いことも事実。私たちは、なぜこうも「結婚」を重視してしまうのでしょうか……。

永田さんはその理由の1つとして、「人は結婚してパートナーや家族を得ることによって成熟・安定する」という古典的な考え方が根強く残っているからだ、と指摘。パートナーや家族がいない人間はアイデンティティが安定せず自暴自棄になりがちで、未婚者が増えると社会が不安定になる……と考える人は今でも少なくありません。さらに現代では、地域の繋がりも企業の終身雇用制度もほぼ崩壊しています。そうなると、個人を包摂できるのはもう家族しかない。国も世間も、個人を支えるすべての機能を「家族」に丸投げしています。

永田さんはこの状況に対して、「『家族しかない』からといって、すべてを家族任せにしていいのか」と問題を提起していました。すべてを家族任せにしてしまうと、未婚者が息苦しい思いをするだけでなく、不登校の子供を持つ家庭が出口を失ってしまったり、介護の問題も個々の家庭に重くのしかかってきます。

対談『結婚と家族にしばられない生き方って? ~「呪い」の言葉をはね返す「白魔法」~』の様子

これに対して紫原さんは、「離婚してからのほうが、子育てで互いに協力できるようになった。自分の友人や元夫の友人など子供に関わってくれる大人が増え、より広い範囲で子供を支えられるようになった」と自身のエピソードを語ってくれました。個人のアイデンティティを守る機能のすべてをパートナーや家族に丸投げしてしまうと、パートナーや家族を持たない人はもちろん、持っている人ですら追い詰めてしまうことがあります。パートナーや家族を持つことは素敵なことだし、自分を成長させてくれるけれど、それ「だけ」が人間を成熟に導くわけではありません。そう考えていたほうが、私たちの社会は風通し良くいられるのではないでしょうか。

しかし、パートナーや家族を持たずに生きていくとなると、当然ながら仕事などを通して家の外で他者と関わる必要が出てきます。というわけで、話は後半の参加者同士で行なうワークへ。