縁もゆかりもない土地への移住に向いている性格

少しだけ、わたしたち夫婦の話をさせてください。
わたしたち夫婦は、元々沖縄出身の夫が関西に10年ほど暮らしていて、わたしは就職を機に札幌から彼のいる関西に移り住みました。
京都で結婚してしばらくしてから、わたしが地元に戻りたい気持ちが強くなり、夫についてきてもらうかたちで現在は札幌で暮らしています。
夫の場合は地元を離れたわけではないため少しあなたと異なる部分はありますが、関西に10年も住んでいればそれなりにコミュニティができていましたし、その地域の文化や習慣にも馴染んでいたと思います。
縁もゆかりもない地への移住はとても勇気が必要で大変なことだったろうと思いますし、移住にあたって転職せざるを得なかったのは、あなたと共通しているのではないでしょうか。
今でも文化の違いや雪の多さに驚くことは多いものの、夫は北海道暮らしを結構楽しんでいるようです。

近くで夫を見ていて感じるのは、縁もゆかりもない土地への移住にわりと向いている性格の人だということ。
「絶対にこの店じゃなきゃダメ」といったこだわりがなく、「また次の機会に来ればいいよね」「きっと新たにいいお店に出会えるかも」と発見の喜びを知っている。
休日のたびに友達と遊んだり、仕事帰りに飲み歩いたりするタイプではなく、どちらかと言えば家でのんびりと過ごす時間を大切にする。
極端な言い方をすると、家の居心地が良くて最低限生活に不便がなければ、どこに住んだっておおよそいいと思っているタイプ。
ただ、だからと家に引きこもっているわけではなく、少しずつコミュニティを広げ、今では気の合う友達もできたようですし、北海道のいろんなところに行ってキャンプや焚火の趣味もできました。
夫なりに、その土地のいい部分に触れよう、人と関わっていこうと、無理のない範囲で能動的に行動しています。
もちろん不安やストレスが全くなかったわけではないでしょうが、「焦ったって仕方がない。長く暮らしていくのだからゆっくり馴染んでいけばいい」という気持ちが根底にあるようです。
こういった夫の性格が、縁もゆかりもない土地への移住のハードルを下げた大きな理由だと思っています。

さて、話を戻しますが、「東京を離れたくない! 福岡で暮らすのは無理だよ!」と初めから頑なになるのではなく、まずは自分の性格は移住に向いているのか冷静に分析してみてはいかがでしょうか。
すでに拒絶反応が大きく乗り気ではないかもしれませんが、誰だって新しい土地に行くことや環境が変わることには不安が伴います。
もしかしたら、今あなたの悩みの種になっている不安は、そういった種類のものかもしれませんしね。

転職が億劫だとか、東京を離れたくないという寂しさを取っ払ったうえで、自分は新たに知り合った人と楽しくコミュニケーションを取れるタイプなのか、自ら新しいコミュニティに馴染めるよう能動的に行動できるのか、なじみのない文化を知っていくことを楽しめる性格なのか、すぐに馴染めなかったとしても焦らず構えていられるか。
きっとこういった性格なら、今は環境が変わることへの不安に注目している部分が大きく、たとえ時間はかかっても新天地で楽しくやっていけると思います。

でも、あなたが今いるコミュニティを何よりも大切にしたいとか、環境を変えることに極度なストレスを感じてしまうとか、あたらしい文化に馴染むまでの時間に耐えきれないとか、新しい世界を広げるよりも今の世界を深堀することに魅力を感じる性格なのであれば、正直福岡での新生活は厳しいのではないかな、と。
やっぱりその土地で楽しむ努力をしなければ、楽しく生活を送ることはできませんからね。
ただそれがダメだというわけではなくて、それぞれに特性がありますから仕方のないことでしょう。