卑屈にならない、人の好意をありがたく受け取る
少なからずショックを受ける気持ちはわかりますが、一度冷静になって考えてみましょう。
彼の「もし好きな人ができたらここに連れてきたい」という言葉は、現時点で他に好きな人がいないという意味としても捉えられます。
もし「今好きな人がいるんだけどさ、今度デートに連れてきたいな」という言い回しなら他に好きな人がいるという決定打になりますが、そういうわけではない。
ということは、彼があなたのことを好きになる可能性はいくらでもありますし、これから先どうなっていくかは現時点ではまだ決まっていないのです。
わたしはあなたが送ってくださった相談文から想像力を働かせて推察するしかなく、その時の空気や声の抑揚、表情などのディテールがわかりませんが、とりあえず、「自分と一緒にいるときに怪我をしたからやさしくしてくれているんだ」と申し訳なく思うのはやめましょう。
卑屈になることで得られるメリットはひとつもありません。
人の好意は、ありがたく受け取りましょうね。
たとえ、彼があなたにお世話をあれこれ焼いてくれる理由が責任を感じているからだとしても、入院中に手紙を書いてくれたこと、生活がままならないだろうと家にごはんをつくりにきてくれたことなどは、いくら責任を感じていてもなかなかそこまでできないと思います。
彼がほんとうにやさしい人だということが、よく伝わってきます。
少なくとも、あなたに悪感情があればできない行動ではないでしょうか。
できることなら自分の気持ちに蓋をしないでほしい
一緒にいて楽しい友達を失うのがこわい、というあなたの気持ちはとてもよくわかります。
そりゃあ誰だって楽しい時間はずっと続いてほしいと思うでしょう。
個人的には、結果がどうであれ好きな人には自分の気持ちを伝えたほうがいいと思っているのですが、でもそれが簡単にできたら苦労はしないですよね。
告白って、勇気を総動員させなくてはいけない行為で、正直博打みたいなものだと思います。
相手も同じ気持ちなのであればこれほどハッピーなことはありませんが、上手くいかなかったら今まで楽しかった友達としての関係すらも失ってしまう可能性があるわけですから。
これまでの連載で、告白するかどうか悩んでいる相談者の方たちには、わたしは「結果がどうであれ、自分の気持ちを伝える行為は今後のあなたにとってきっと価値のある経験になる」とお話しをさせていただいてきました。さらには、「気持ちの整理をしたい、切り替えたい」というあなたの悩みを解決する最短距離にもなりますから、できることなら自分の気持ちに蓋をしないでほしいというのがわたしの願いです。
でも、決めるのはあなたですから、そこはわたしが口を出せる範囲ではないんですよね。
ただその場合、彼に気持ちを伝えなかったことを後悔しないか、彼に好きな人ができたときに友達として祝福できるか、というのはよく考えてほしいと思います。
あなたに限らず、片思いをしている人の中には、現状の関係性が楽チンで楽しいほど自らの手で変化を起こすことを躊躇する人もいると思います。
ただ、その関係をずっと続けていくのは容易ではありません。
友達という関係は、恋人や配偶者とはまた別の意味で、環境による変化を受けやすいもの。
相手に恋人ができてしまえば、今までのように気軽に連絡を取り合ったり二人きりで会ったり、というのは難しくなるはず。
それをわかっているからこそ、あなたは気持ちの整理と切り替えをしたいと考えているのかもしれません。
元も子もない言い方になってしまうのですが……彼と友達関係を維持させながら気持ちの整理や切り替えをするなんてのは、はっきり言って無理だよ!
すでに好きな気持ちを抱えているのですから、これまで通りの付き合い方をすれば余計に募るでしょう。
決着をつける行為なしに、自分の中“だけ”で感情を変えるなんてのは至難の業です。
たとえば、物理的な距離ができて、仕事や趣味などが忙しくなって、少しずつ彼と接する時間が減ったり、彼以上の素敵な人と出会って気持ちをギューンと持っていかれたりなど、なんらかの外的要因を必要とするでしょう。
もしくは、彼と接しているうちに「あっほんとうに彼はわたしに対して恋愛感情が全くないんだな」という気づきを重ねていくことで、否が応無しに諦めがつくとか。
これは“日にち薬”と呼ばれるもので、時間の経過に伴って気持ちに変化が訪れるのは必然ですし、手段のひとつではあると思います。
でも、あなたは年齢的に焦りを感じてもいるんですよね。
その焦りは、とてもよくわかります。
ただ、なんでもかんでも手に入れるのはどうしたって無理なんです。
ここで言う“手に入れる”対象は、地位やお金ではなく、人生において理想とするスマートさや、感情を上手にコントロールすることも含まれます。
できることなら彼と付き合いたい。でも今の楽しい関係が失われてしまうのはつらいから友達として接していきたい。その過程で自分の気持ちをズバッと切り替えられるようになりたい。連絡のやりとりや会うのをやめたら切り替えられるかもしれないけれど、それはそれでさみしい。次の恋愛に目を向けたいから彼への気持ちをズルズル引きずりたくない……これらを全て叶える――人との関係性も、自分の中の感情も、全部うまい具合になんとかしようとしたところで、その通りにはなりません。
あなたはまず、その事実を受け入れてほしいと思います。