鈴木涼美 宮本晶比古

――現代人が結婚から遠ざかっているのは、やはりそのメリットの少なさのせいということは言えそうですね。

鈴木

私自身、結婚制度に対する強い反発があるわけでもないし、一人でいる強いこだわりがあるわけでもないんです。
ただ、仕事や恋愛を続けたい女性にとっては、結婚で得られるメリットよりも、結婚によって諦めなきゃいけないこと、捨てなきゃいけないもののほうが大きいんですよ。

 たとえば、「今はいろんな形の結婚が認められています」と表向きは言っているけど、“結婚とはこういうもの”という前提や固定観念は、この先もしばらくそんなに変わらない気がしていて。
多くの男性は、結婚した奥さんが私みたいに毎日夜遊びで出歩いているとか、過去にAVに出ていたとかっていうことに対して、やっぱりすごく抵抗があると思うんです。
そこに合意して結婚するからには、私も毎日飲み歩いたり、男友達と2人で旅行に行ったり、というのがもうできなくなってしまうので、それはちょっと嫌なんですよね。

 まあ、私の場合は極端かもしれないけど、生活の安定や将来の安心といった結婚のメリットのために、現在の自由や楽しさを諦めたくない、というのが多くの女性の本音だと思う。
自分がもともと持っていた自由が大きい人ほど、手放さなければいけないものが増えるので、結婚には向いていないでしょうね。
逆に、“諦める技術”が優れている人ほど、結婚には向いていると思います。

目的のある結婚でないと、“諦める覚悟”は持てない

――“諦める技術”とは、具体的にどういうことでしょうか。

鈴木

たとえば、男や結婚を“自分の生活のためのツール”と割り切れる人は、結婚に向いていると思います。
私の友達にも、働くことが本当に嫌いで、その代わり家事は苦にならないという子がいて、「あなたが就活するのとまったく同じ気持ちで、私は婚活をするんだ」といって商社マンと結婚して専業主婦になりましたけど、その子は今すごく幸せそう。

 彼女にとっては、好きな人と出会って付き合って、ひざまずいてプロポーズされて……みたいなロマンチックラブは、生活のためには諦めてもいい要素だったわけです。
一人でいるより結婚している女性のほうが圧倒的に守られるという現状の制度下では、そういう選択も全然ありだと思う。