外飲みのおひとりさまデビューは酔った勢いで!ツレヅレハナコ×新久千映対談(後編)

「SOLO」の大好評連載を書籍化した 『女ひとりの夜つまみ』が2月10日に発売されたツレヅレハナコさん。その刊行を記念して、呑兵衛女子を描いた人気漫画 『ワカコ酒』の作者・新久千映さんとの対談が実現!
都内のバーで「女ひとり呑み」の同志が大いに語り合いました。
前回の「家飲み編」に引き続き、後編となる今回は「外飲み編」となります。

チェーン店すぎず個人店すぎず…ひとり飲みにちょうどいいお店

©ツレヅレハナコさん×新久千映対談画像 ツレヅレハナコさん×新久千映

――家飲み派のハナコさんに対して、 『ワカコ酒』『新久千映の一人さまよい酒』などで外飲みをきわめている新久さんですが、ひとり飲みにちょうどいいお店選びの基準やこだわりってありますか?

新久千映さん(以下、新久)

その日の気分によって、今日はしゃべりたいな、誰かと触れ合いたいなというときは、小さな個人店ですね。隣どうしの席が近くて、常連さんと自然と話が弾むような楽しいお店を選びます。
逆に、静かにしっとり飲みたいときは、ちょっと大きめであんまり構ってくれなさそうなお店にします。ただ私の場合、1〜2杯飲むと、2軒目以降はたいてい誰かとしゃべりたくなって小さい店に行っちゃいますね(笑)。

ツレヅレハナコさん(以下、ハナコ)

私も、会社から駅までの帰り道にある焼き鳥屋さんにたまに通うんですけど、近所に2店舗くらいしかない、いい感じにチェーン店すぎず個人店すぎず……みたいな、ひとり飲みにちょうどいいお店なんです。
私はふだん、おいしいお店を人に紹介するのが大好きなんですけど、そのお店は別に誰かを呼びたいわけじゃなくて(笑)。すごくおいしいわけでも、まずいわけでもないけど、ほどよくて落ち着くんですよね。引っ越したり会社が変わったりしたらたぶんもう行かないだろうなー、くらいのいい距離感っていうのがあるんですよ(笑)。

新久

わかります、わかります! 特においしいわけじゃないけど、ひとりで飲みたいお店ってありますよね。
ひとり飲みのきっかけは酔った勢いで! 味が想像できちゃうお店には行きたくない

ハナコ

『新久千映の一人さまよい酒』にも描かれてましたけど、気になるお店を見つけたとき、中の店員さんに気付かれないように、さりげなく外からチェックしたりする気持ち、よくわかります!
ずっと気になっていたけど、入りづらくて勇気が出ないお店に、別の店で一杯引っかけてから行くことはありますね。ガソリンを入れて勢いをつけて、「よし、今日はあそこ行ってみるか!」みたいな。

新久

あるある! 私がひとり飲みを始めたのは24〜25歳のときだったんですけど、そもそものきっかけは、飲み会の帰りに飲み足りなくて、酔った勢いで一人でふらりと立ち寄ったのが最初でしたから。
読者の方からも、「ひとり飲みしたいんですけど、どうすればいいですか?」とよく聞かれるんですが、「最初は一杯引っかけた勢いで行くのがいいですよ」って言ってます。

――よさそうなお店って、どこを見て判断しますか?

ハナコ

どうでしょう。ここはダメだ、というサインならありますけどね。メニュー名が長すぎる店とか(笑)。
「トマトとザーサイのなんとか和えなんとか風味」みたいのを筆ペンで書いてあるんですけど、フォントみたいにみんな似てるんですよね。私は“居酒屋文字”と呼んでるんですけど。

新久

そういう居酒屋、多いですよね。メニューの値段が朱文字で囲ってあって、だいたいバーニャカウダがあって、卵が赤い(笑)。

ハナコ

あと、「心を込めて仕込み中」っていう看板がありますよね(笑)。そういうところは、判で捺したみたいにメニューの内容も値段設定も似てるし、食べなくても味の想像がつきやすいのが残念かな〜。

新久

判で捺したように似てるのに、「個性出してるでしょ」って感じがするのがちょっと……ですよね。

ハナコ

もちろん、みんなで行くぶんには全然いいお店なんですけど、せっかくひとり飲みをするなら、内容が予測できないメニューが私は好きなんです。
あるお店で、メニューに「アンチョビバター」としか書いてなくて、頼んだら皿にトーストとアンチョビとバターが並んでいて、自分で塗って食べるやつで。「こうきたかー!」みたいな驚きがあるのが好きですね。

お酒の飲めないシリアで
やっとありついたぬるいビール

©ツレヅレハナコさん×新久千映対談画像 新久千映さん

――ツレハナさんは海外旅行がお好きで、その経験や思い出の味もレシピに生かされていますよね。

ハナコ

中東がすごい好きなんですけど、基本的にお酒が飲めないじゃないですか。トルコだけは国でワインを作っていたり、ラクという蒸留酒があったりと、お酒の文化があるんですけど、シリアとかイランではさすがに飲めない。
あんなにお酒が進むおいしい料理があるのに、みなさんが飲まずにいられるというのが毎回衝撃で(笑)。羊を炭火で焼いたらそりゃ赤ワイン飲むでしょう、ひよこ豆をフムスにしたらそりゃ飲むでしょう? みたいな。ムスリムであれば当然のこととはいえ、信仰の力は本当にすごいなあとつくづく思います。

新久

現地でよく飲まずに我慢できましたね!

ハナコ

シリアにいたとき、どうしても我慢ができなくてお酒が飲みたいと宿の人に言ったら、バスでこの店に行けと言われて、雑貨屋みたいなところに連れて行かれて。
おそるおそる「ビール飲みたいんですけど」と言ったら、奥から黒いビニール袋を持ってきて、中に新聞紙にくるまれたぬるい缶ビールが入っていて、「決して道で飲んではいけないよ」って渡されました(笑)。そのままタクシーですぐ宿に帰ってグーッと飲みほしましたね。

新久

一歩間違えたらどこに連れて行かれるかわからないですよ……命がけのビールですね(笑)。