私にとっての、セックス、愛、パートナーの意味を考える

動物性愛が、どうあるべきか。私はAMにおいて、それを考えることはしない。

ただ、私がこの本を多くの人に勧めたい理由は、ズーや濱野さんの体験を通して、「では『私』にとって、セックスとは、愛とは、パートナーと対等であることとは、どういうことなのか?」を考えるきっかけになるからだ。

言葉も通じず社会性も持たない犬との間に、「セックスを合意する意思疎通」や「対等なパートナーシップ」が成立し得るかどうか、確かに怪しい。でも、言葉が通じて同じ社会に生きている人間同士であるなら確実に成立するのかどうかも、考えてみると実は怪しい。

人間の女性と結婚していた時期もあるミヒャエルさんは、夫婦間のセックスが、「したいからする」ではなく「婚姻関係継続のための交渉ごと」になってしまったことを、重荷に感じていたと語る。相手を支配するために、交渉のために、駆け引きのために。確かに、人間はセックスに様々な意味を与えてしまう。そこに、本当の意味での「合意」や「対等」が成り立っているのかどうか、私は疑問を感じる。

本書では、濱野さんが「エクスプロア・ベルリン」なるセックスにまつわるイベントに参加するところも面白い。「言葉を使わずにどのように触れて欲しいか、あるいは触れて欲しくないかを表現する方法を学ぶ」というワークショップに、濱野さんが参加するのだ。これはきっと、私たちの中にも難しく感じる人がたくさんいるだろう。

動物性愛。ただそう聞いただけだと、アブノーマルなものだと思って、拒絶する人もいるかもしれない。ただ、自分自身のセクシュアリティと向き合うために、パートナーシップについて考えるために、私は『聖なるズー』を、やっぱり強く推しておきたい。

初の書籍!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。