「仕事相手とセックスはするな!」出版界に於けるわたしのノウハウ

自分にかかった呪いに、はたと気が付くことってないですか。例えばわたしは枕と本は踏めないし、ザルも頭にかぶれない。ある時平然と床に散らばった本を踏んづけて歩いている恋人に「本を踏むの、辞めてくれない?」と注意したら、「なんで?」とまったく悪意なききょとんとした表情で見返されて「いや、本は踏むものじゃないって親に教わったので」と言ったところ「育ちがいいんだね~」と返されたことを鑑みれば、呪いじゃなくって親の躾の賜物だと思ったほうがポジティブではある。あと、そもそもザルを被る機会なんてないので、どうでもいいといえばいいのですが、生まれながらではなく、後から刷り込まれた嫌悪感があって出来ないことって誰にでもあると思うのです。

仕事相手とはヤラない方がいい

その呪いひとつに「仕事相手とセックスができない」というのもわたしにはあります。それは20代頭の頃にちょいとした関係を持っていた業界のおっさんが、弱小版元をやめて某大手出版社に、常駐フリーランスという立場で働き始めたばかりのわたしに「仕事相手とセックスをするのは絶対にやめたほうがいい。絶対にいいふらされて『あの女は仕事相手とヤル女』だって知れ渡るから」といったおかげで、まぁそれから25年近く経ったいま、その言葉はまったく正しかったと思っている。ヤラなかったおかげで男性の編集者ともライターの先輩たちともスカッと付き合えている感は否めないし、仕事のオファーがくると「わたしの実力が評価されている~!」と思えることは、仕事を続けていく上で励みになる。呪いといいつつ役立ってるじゃないか! でもさ、それでいくつ、アヴァンチュールや恋のチャンスを逃してきたかと考えると……。

出版界に於けるノウハウといえば

いやいやいや。というわけでわたしがひとつ出版界に於けるわたしのノウハウをあげるとすれば「仕事相手とセックスはするな!」なわけなんですが、そんなわたしが聞き手として、出版業界におけるヒットのノウハウを彩図社の草下シンヤさんに聞いた『ヒットを生む技術 小規模出版社の編集者が”大当たり“を連発できる理由』という書籍が、鉄人社から先日刊行されました。草下シンヤさんといえば手掛けた書籍の累計発行部数2千万部以上の敏腕編集者で、累計部数100万超の著書『半グレ』が、この秋にドラマ化するという売れっ子作家。Xでは裏社会の情報を発信するインフルエンサーとして人気を博し、プロデュースしたYoutubeチャンネル『丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー』は130万人越えの人気チャンネルに育て上げる鬼才の人。

なのですが、そんな草下さんと初めて仕事でご一緒したのはAMで行われた『恋人に嘘がバレたら逆ギレしよう!草下シンヤ×キメねこ「やばい嘘のごまかし方」対談』なのです。このエッセイも担当していただいているI嬢に構成のオファーをいただいた。ありがたき!

草下さんとは、そのちょっと前に一度だけ飲み会で同席したことはあったのですが、その時はあまり話もしなかったので、ちゃんと対面するのはその対談時が初めてでした。が、キメねこさんとの対談が進むにつれ、そのすごさを思い知ることになりました。とにかく物事の考え方がべらぼうに面白いし、なんて一本筋が通っているのだとも感服した。対談を読めばわかっていただけると思うので、ぜひご一読いただけますと幸い……というのはさておいて、取材が終わった後のことです。