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  • 2016.10.18

なぜエロメンは料理するのか?――女性向けAVの料理シーンを考える

AMで「ヒモが作る、いたわりご飯」を連載中のまいったねぇさん。いつも彼女とのステキな生活を綴ってくれていますが、料理が上手な男性ってみなさんどう思いますか?実はSILK LABO作品にも、料理する男性はよく出てくるそうです!たくさんの作品と厚生労働省の統計を用いて、男性の「花嫁修業」について考察します。

料理ができる男はモテる

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 研究
by Jaume Escofet

 こんにちは、まいったねぇです。




 0.8秒でバレる嘘をついてしまったが、服部恵典です。

 AMで「ヒモが作る、いたわりご飯」を連載中のまいったねぇさんは、勝手に年上だとばかり思っていたが、実は同じ1993年生まれだと知ってびっくりした。
文系の大学院生なんて四捨五入すれば無職なので、そのあたりも2人は共通している。

 だが、そんな2人の間には大きな違いがある。彼女がいるかどうかだ。
かたやステキなヒモ、かたや独りでAV観てオナニーばっかりしてる男。どうして差がついたのか……慢心、環境の違い、いやきっと料理スキルの有無なのである。
私は料理するとなったら、カレー、豚キムチなど「あ~、男子大学生っぽいなあ~」って感じの簡単なレシピ10パターンぐらいしか基本的に作らない。
ましてやローストビーフサムゲタンなど、作ったことあるはずがない。ひそかに私に恋心を抱いていた読者がもしいるならば、がっかりさせてしまって申し訳ない。

 別に、料理が上手だとモテる、というのはまいったねぇさんただ一人を例に言っているわけではないのだ。
実際、厚生労働省の統計を見ても女性はパートナー男性の家事能力を非常に重視しており、しかも女性向けAVレーベルSILK LABO作品にも、料理する男は多く登場するのである

女性向けAVに現れる料理シーン

 SILK LABO作品のドラマパートでは、何らかの形で料理シーンが登場することがよくある。
しかし、女性だけが料理している作品は少ない。
卒論のために私が視聴した、『ファインダーの向こうに君がいた』から『…because Egoist』までの60作品のうち、そういう作品は『繋いだてのひらから伝わること』『クロスロード』だけだったと思う。

 ではどんな料理シーンがあるのかというと、まずカップル2人で料理するパターンがある。同棲していたり、おうちデートだったりするわけだが、たとえば『東京恋愛模様』の小田切ジュンパートがそれだ。

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 研究 東京恋愛模様 小田切ジュン
©『東京恋愛模様』

「ソース飛んじゃうよ!」「だいじょぶだよ、それにパスタはいっぱい絡めた方が美味しいんだから」なんて話しながら2人でお昼ごはんを作っている。
たしかに、小田切が真っ白なシャツを着ているので、汚れてしまわないか見ていてそわそわする。
ちゃんとエプロンをしたほうがいいと思うのだが、画像を見てもらえば分かるようにエプロンで守られているのはちんこの辺りだけだ。

 あるいは、彼女がいつも料理してくれるお礼に彼氏が作ってあげる『One’s Daily Life season1.Gift to you』などもあるが、もう少し料理慣れしたものだと『恋するサプリ -年下のカレ-』がある。
年下なのにしっかりものの彼氏(月野帯人)に主人公は甘えてばかりで、朝食もいつも用意してもらっているらしい。
主人公はある晩、ズボラでだらしない自分を反省するのだけれども、結局セックスの翌朝も月野がいつものように朝食を作ってくれていて、しかもダメな自分をダメなまま愛してくれる。夢のあるストーリーである。

 もはや男性の料理の腕前がプロ級の作品もある。例えば『デリシャスタイム』はレストランが舞台だから、当然女性シェフだけでなく男性シェフがいる。
さらに『Touch the Heart 一徹』撮り下ろし作品「Grow Up」は、元シェフの彼氏が主人公の女性に料理を教えてくれるのだ。

 以上のように、女性こそ料理上手であるべし、という保守的な性別役割分業意識は、SILK LABO作品ではほとんど見られない。

 男性登場人物も料理する、というこの演出は、「料理は女だけの仕事じゃない! 男女平等!」というPC(ポリティカル・コレクトネス、政治的正しさ)への配慮なのだろうか。
もちろん、それがないとは言わないけれども、おそらくそれだけではないだろう。

 たとえば、SILK LABO作品ではコンドームを装着するシーンがほぼ必ずあるが、これは元々「AVっぽいセックスじゃなく、もっと普通でいいじゃないっていう気持ちや、『避妊はちゃんとしましょうね』という啓蒙として入れてた」という堅苦しい理由だったが、「それが『女のコのことちゃんと考えてくれてて優しい!』と、思わぬ萌えポイントとして受け入れられてしまって(笑)」とプロデューサーの牧野江里が語っている(参考)。

 男の料理シーンの多さもおそらくは、「彼氏が料理上手だと素敵」というもっと素直な感情が由来しているにちがいない。
実際、国の統計を見ても、パートナーの家事能力が高いと嬉しいという女性は非常に多いのだ。

「花嫁修業」は男性こそすべし

 ジェンダー論が専門の社会学者・瀬地山角が東洋経済ONLINEの連載で述べているように男の家事能力とモテには密接な関係がある。

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 研究 瀬地山角
国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」より瀬地山作成

「第14回出生動向基本調査」(2010年)によれば、結婚相手の条件として求めるもの第1位は男女とも「人柄」である。ただこれはまあ、結局本人にしか分からないフィーリングというやつで何も言ってないに等しく、1位になるのは当たり前だ。

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 研究 瀬地山角
国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」より瀬地山作成

 興味深いのは、独身女性がパートナーに求める条件第2位が「家事の能力」だということである。
しかも、男性が「家事の能力」を結婚相手に求める割合が93.1%であるのに対し、女性の場合は96.4%で微妙に上回っている。
さらに、「考慮する」程度ではなく「重視する」と答えている人の割合は、男性47.5%、女性62.4%であり、より差が大きい。

 もちろん、男女で異性に期待する家事能力の程度が違うのは間違いない。
女性が「週に1回夕飯の準備を代わってくれたらな」という程度しか男性の家事に期待していなかったとしても、男性のなかには「女たるものサムゲタンぐらい作れなくては」と考えている人もいるだろう。
逆に女性も「男たるもの年収600万ぐらいなくては」と過度に期待している部分もあるかもしれない。

 だとしても、あえて大げさに言うなれば、「花嫁修業」の効果が高いのは女性よりも男性なのである。
しかもさらにグラフを見ると、「経済力」よりも「家事の能力」のほうが重視されているではないか。経済力があって家事ができない男性よりも、家事ができるヒモのほうが結婚できるのだ! まいったねぇさんがモテるのも当然だ!

 ただし、交際市場と結婚市場は別だし、交際開始能力と交際継続能力も別である。
だからつまり、料理が得意でも「胃袋をつかんで逃がさない」ことができるだけで、おそらく「惚れさせる」際には威力を発揮しない。
したがって、「人柄」「容姿」など含めた総合的な人としての魅力が伴わずにただ料理が上手なだけならば、宅飲み用の便利要員に収まるのがオチだろう。

 けれども、料理スキルは男女関係なく「人間」のスキルとして重要であり、一人でつくって一人で好きなものを食べるのもそれはそれで楽しい。
私も見習って、フレンチトーストレベルから料理を始めてみようと思う。
まいったねぇさんも、「『できること』からやってみると意外な道が拓けるかも知れません」と言っていることだから。

Text/服部恵典

次回は<男女の友情は成立するのか?――数%のセックス成分>です。
男女の友情は成立するのか。AMのコラムでも何度も論じられたこのテーマに、女性向けポルノを研究する東大大学院生が出した答えは「成立する。セックスせずにいられるからではなく、セックスしても友情は成立するからだ」というもの。一体なぜ?その答えは「ホモソーシャル」を描いたBL(ボーイズラブ)作品にあるようです!

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ライタープロフィール

服部恵典
東京大学大学院修士課程1年。同大学卒業論文では、社会学的に女性向けアダルト動画について論じる。

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