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  • 2016.01.10

女の恨みは幽霊にも勝る!恐怖の三角関係を描く『クリムゾン・ピーク』

幽霊が見える女性・イーディスはトーマスと運命的な出会いを果たし、トーマスの姉・ルシールとともに山頂の屋敷で暮らし始める。その後、屋敷では不可解な出来事が立て続けに起こり続ける——。『パンズ・ラビリンス』の鬼才ギレルモ・デル・トロ監督が放つゴシック・ホラー

たけうちんぐ 映画 クリムゾン・ピーク
©Universal Pictures

 想像していた映画とまるで違った。それは肩透かしを食らったわけでもなく、ガッカリしたわけでもない。
雪山。幽霊。秘密。ホラーの三原則が揃い踏みして襲いかかってくるのであれば、心の準備はできている。「幽霊でしょ。見える人しか見えないんでしょ。じゃ、大丈夫でしょ」と高を括っていたら、別の恐怖が待ち構えていた。

 それは誰の目にも見える。そこに、あそこに、すぐここに存在するモノ。幽霊に怯えるはずが、まさか人間に震え上がるとは!

 唯一無二のイマジネーションと、誰もが楽しめるエンターテイメント性。その2つの均衡が取れる監督といえばギレルモ・デル・トロ。『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』で一躍も二躍も脚光を浴びた彼が今回題材に選んだのは、ファンタジーでもロボットでもなく、まさかのゴシック・ホラーでした。

『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ、『アベンジャーズ』のトム・ヒドルストン、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステインが幽霊以上に恐ろしい三角関係を作り上げ、赤褐色の粘土よりドロドロとした人間模様を繰り広げます。


史上最大級の恋愛“失敗談”


たけうちんぐ 映画 クリムゾン・ピーク
©Universal Pictures

「好きになった人の実家が死ぬほど寒くて超不気味で」
「というか幽霊が住んでて」
「で、姉が狂ってて怖くて」

 恋愛の失敗談は数あれど、ここまで壮絶な失敗はないでしょう。
トーマスがたとえ準男爵の称号を持ち、社交界でも一目置かれる実業家というスペックでも、ちゃんと相手を見て結婚しなさい!と、シンプルで的確な教訓にも読み取れる。
彼氏がやたら過去に囚われていないか。粘土堀削機というマニアックな発明に命を賭けていないか。イーディスが盲目的に彼を愛してしまったために見抜けなかったこの2点は、なるべく確認してから付き合いたいものです。

 幽霊のビジュアルイメージがとにかく怖い。薄っすらとその骸骨姿を浮かべてイーディスの周囲を彷徨う姿は容赦なく不気味だが、「クリムゾン・ピークに気をつけろ」って謎の警告をしてくれるから、実は優しいのかも。
「意外にいい奴じゃん」と油断するも束の間、本当に恐ろしいものが凶器を持って襲いかかってくるのだ。


幽霊でも屋敷でもなく、本当に恐ろしいのは人間


たけうちんぐ 映画 クリムゾン・ピーク
©Universal Pictures

 誰もいないのに何度も捻られるドアノブ。赤褐色の水が勢いよく流れる水道管。屋敷のどこまでも青暗くて長い廊下ーー。
恐怖演出が隅々まで痒いところまで行き届き、観る者の手足をガシッと抑え付けるようにこの世界から逃さない。

 イーディスの父の死の真相と、結婚相手のトーマスとその姉・ルシールが屋敷に隠した秘密。その2つが一緒くたになって明かされるクライマックスでは、イーディス、トーマス、ルシールの三角関係が一挙に浮き彫りになる。愛に狂った女の恐怖が、幽霊なんて軽く超えるレベルで飛び込んでくるのだ。

 終盤、「あ、あれ?こんな映画だったっけ?」と、良い意味で裏切られる。怖すぎて、逆に笑いが込み上げてくるくらい。そんな“人間の本性”をスクリーンの中でも外でも炙り出す。

 本当の怪物は血と肉でできている。それはトーマスが必死こいて生産する赤い粘土よりもネバつき、繋がりを求めたがるもの。白い雪山と赤い粘土のコントラストがまるで人間の切っても切れない血縁と、妬みや恨みで浮き上がった血管を表しているかのようだ。

 愛とはいかに狂気を孕むものなのか。
ミステリアスな存在だったルシールが次第に正体を明かし、豹変していくスリルに人間の恐ろしさが全部詰まっている。
濃く明るい赤色(=クリムゾン)に塗られたドロッドロの三角関係をお楽しみください。


あらすじ


 20世紀初頭のニューヨーク。
10歳の時に死んだ母親の霊を初めて見て以来、イーディス(ミア・ワシコウスカ)の目には幽霊が見えるようになった。
小説家の彼女はやがて実業家のトーマス(トム・ヒドルストン)と出会い、彼の不思議な魅力に惹かれていく。幼なじみの医者のアラン(チャーリー・ハナム)にも求婚を迫られるが、イーディスはやがて父の突然の死をきっかけにトーマスと結婚し、彼の広大な屋敷に住むことになる。
トーマスの姉のルシール(ジェシカ・チャスティン)とともに3人で暮らし始めるイーディスだが、幾度となく深紅に身を包んだ亡霊たちが目の前に現れる。
「クリムゾン・ピークに気をつけろ」と警告する亡霊たちの言葉の意味とは? そして、トーマスとルシールが屋敷に隠す秘密とは何か?


TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中!

監督:ギレルモ・デル・トロ
キャスト:ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストン、ジェシカ・チャステイン、チャーリー・ハナム
配給:東宝東和
原題:CRIMSON PEAK/2015年/アメリカ映画/119分/R15+
URL:『クリムゾン・ピーク』

Text/たけうちんぐ

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

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