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  • 2014.06.14

浅野忠信×二階堂ふみの禁断の愛!塗り重ねた秘密を抱える父娘の罪『私の男』

「私の男」って誰に対して言えるのでしょう。
その男が私以外にも繋がっていて、関係を持っているとしたら「私の」なんておこがましくて言えない。私だけでなく、みんなの男。「彼氏」でも「恋人」でもない。

「私の男」とはもっと所有していて、より管轄内にある。そして「私だけの」が孤独を意味し、寂しい。
それって一体、どんな男? その男に寄り添うのはどんな女?
この映画の淳悟は、紛れもなく花の「私の男」なのです。

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©2014「私の男」製作委員会

 桜庭一樹のベストセラー小説を、『海炭市叙景』『夏の終り』の熊切和嘉監督が映画化。描かれる登場人物は、映像にのみ生息する存在じゃない。全員が生々しく、すぐそばで生きているかのよう。リアルな人物描写を得意とする熊切監督が、原作の映像化不可能と言われた流氷のシーンを実現しています。
孤独に寄り添う淳悟役と花役に、いまや日本映画界に欠かせない存在の浅野忠信と二階堂ふみの二人。16年の長い月日の中で、心だけでなく次第に身体を重ねていく関係が生々しい。
観ていて心をえぐられるほど痛々しく、そして艶やかに演じる二階堂ふみの演技に注目せざるをえないです。


男女のタブーに触れた「愛」の物語

 【簡単なあらすじ】
 大地震の津波により、家族全員を失って孤児となった花(二階堂ふみ)は遠い親戚と名乗る男・淳悟(浅野忠信)に引き取られる。寂しさと不安で泣く花に、淳悟は「俺は、おまえのもんだ」と手を握りしめ、それから数年の月日が流れた。
北海道の田舎町。花は成長し、春から中学生になる。淳悟は恋人がいるが、どこか心ここにあらずの状態。あらゆる時間を花に費やし、またそれを花は受け入れていたからだ。
やがて高校生になった花は淳悟とただならぬ関係を持ってしまう。それを知った大塩(藤竜也)は淳悟と引き離すために、花に旭川の親戚を紹介しようとする。
しかしそれがある事件を生み、花と淳悟は逃げるように田舎町を離れる事になる——。

愛が嘘を呼び、嘘が血を流す

 観終わった後は衝撃でしばらく脳が機能しない。叩きつけられる。
その後、親子丼を食べてしまった。なぜか血が混じったような味がしてマズい。それでもお腹が一杯になってしまう。

 血の味のする「親子」丼。まさにこの映画でした。
花は淳悟を愛するがあまり、流氷の海辺でとんでもない罪を背負ってしまう。それを庇おうとする淳悟の嘘がまた新たな罪を生み、それをまた花が庇う。それらの罪には大量の血が流れていく。二人が抱き合うシーンに降り掛かる血と同じように。

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©2014「私の男」製作委員会

 愛は決して美しいだけじゃない。性器が精子と尿の二つを発するように、美しい物と汚い物が混在する。血は、花のアソコから流れる血でもある。二人の愛が多くの嘘をつき続け、その嘘を貫き通すために流れるものなのでしょう。
日が暮れる頃に鳴るチャイムと、電車の走る音。二人の日常を壊すように鳴る二つ。そこで引き裂かれるのは二人ではなくて、二人と世界の関係。太陽と月と世間に背き、罪を重ねるたびに二人の距離は近くなっていく。

「後悔なんてしない。好きな人にも、させたくない」

 花のセリフが胸を締め付ける。愛を守ることが攻撃になる。孤独を埋め合わすことが悲劇を連鎖し、罪が罪を生む。この悪循環を、ただ見守るしか術がないのです。


全部、二階堂ふみのもんだ

 関係なんて大体が希薄で、時間が経てば変わってしまう。かつてラブラブだったカップルも時間には勝てない。多くの両親の現状がそれを教えてくれる。

 この映画の二人はそんな生易しい関係じゃない。それも孤独が全部悪い。空虚が大きければ大きいほど関係は“永遠”に近づいていき、その意味のまま言いかえると“牢獄”でしかない。
お互いが囚われの身。どれだけ世間から逃げても、淳悟は花から、花は淳悟からは逃れられない。淳悟は花のすべてを知っていて、花もまた淳悟のすべてを知る。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと 熊切和嘉 浅野忠信 二階堂ふみ 高良健吾 藤竜也 日活 私の男 父 娘 恋人 孤独感 カップル 愛 罪 ©2014「私の男」製作委員会
   

「全部、私のもんだ」

 友達、恋人、父親。全部が、淳悟。この世に存在するすべての男女関係を淳悟で築いてしまった花は、二階堂ふみ以外に演じられる人はいない。
その目、表情、艶やかさ。今までに観たことがない。全編、二階堂ふみという女優に胸ぐらを掴まれてしまう。何を想っても考えても、淳悟のようにまるですべてを見透かされてしまう。

「私の男」とはスクリーンの前にいる男全員になる。その幼さも大人っぽさも武器でしかない。まるで生まれた時から花が二階堂ふみであったかのよう。彼女が浴びる返り血の匂いがこちらにも漂ってくる。
流氷、濡れ場、そしてラストシーン。何もかも、その目がヤバすぎる。

「全部、二階堂ふみのもんだ」

 それを知るだけでも充分強烈で、凄まじい映画なのです。

歪んだ愛が二人の世界を閉塞させる

「私の」が意味する関係性と、身寄りのない得体の知れない孤独感。
少なからず、誰もが身に覚えがあると思います。愛する何かを守るために攻撃に走り、真実から遠ざかることがあるかもしれないということを。

 この映画に似合うラブソングなんてない。
あるとしたら、言葉を要しないBGM。日が暮れる時のチャイムと、電車の音。すべてを切り裂く轟音だけが、世間の声を掻き消し、二人の愛を包み込んでいるのです。


6月14日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

監督:熊切和嘉
キャスト:浅野忠信、二階堂ふみ、高良健吾、藤 竜也
配給:日活
2013年/日本映画/129分
URL:映画『私の男』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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たけうちんぐ
ライター/映像作家

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