私の電話は『119』?看病をお願いすることは限りなく束縛に近い(後編)

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感謝されて心変わり

大泉りか 人妻は不倫の夢を見るか? picjumbo.com

 それは、とある冬の日のことでした。年中、体調不良のその彼から「熱が40度くらいある。インフルエンザかも」とメールが届いたのです。

 わたしはいつものように「病院に行ったら」と返しましたが、「しんどくていけない」という返事がきました。
それを見て「いつものことか」と考えたわたしは、看病に駆けつけることもなく、仕事を終えた後、友人と酒を飲みに行き、自宅にたどり着いたのは午前様でした。翌日、二日酔いのまま目を覚ますと恋人から「まだ熱がさがらなくて、本当にシンドい」とメールが届いていたので、「週末には会いに行けるけど、それまでによくなっているといいね」と返しました。

 そして迎えた週末。彼に会いに行くと、熱はすっかりと下がった様子。

 が、しかし「治ってよかったね」というわたしに彼はこう言ったのです。「ちょっと酷くて、男友達の〇〇に来てもらったんだよね。ポカリとか、食べ物とか届けてもらった。そしたら、あいつ、彼女は何してるんだって言ってたよ」と。

 その男友達は、ちょうど近所に住んでいたというわけでもなく、電車で三十分以上かかる自宅から駆け付けてくれたのでした。さすがのわたしも「男友達を呼ぶほどに、切羽詰まって具合が悪いんだったら、看病に来てあげればよかった」と思いました。

 なので、それから数週間後に、「具合が悪くって、寝込んでる」と恋人から連絡が届いたときには、仕事を終えた後すぐ、看病へと駆けつけたのでした。

 看病に訪れたわたしに、恋人はとても感謝してくれました。感謝されると、やっぱり嬉しいものです。
「飲み会に行きたい」という自分のわがままを抑えて、人に優しく出来ている自分に満足感を抱くと同時に、恋人に感謝されることの喜びを知ったわたしは、「病院に行かないという選択肢を取っている人を看病する筋合いはない」という考えを改めて、「恋人の具合が悪ければ、看病に駆けつける派」へと転身したのです。